ジュニアスキー

ジュニアアルペン競技とスキー全般についての情報ブログです。

eBookが「活字離れ」対策に果たす役割

電子書籍は“黒船”なのか

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

過剰な期待は禁物だが、「活字離れ」を抑える可能性あり

2010年06月29日

 iPadやキンドルの登場で注目が集まるeBook(電子書籍)。「活字離れ」対策として、eBookは有効なのか。6月23日に第6回「活字離れ」に関する有識者勉強会を都庁で開き、ITジャーナリストの西田宗千佳さんを招いて講演をしてもらった。


アメリカではキンドルが60%、ソニー・リーダーが30%

 6月23日付の日本経済新聞が、好調なiPadの売れ行きについて報じている。

「米アップルは22日、多機能携帯端末『iPad(アイパッド)』の販売台数が21日時点で300万台を超えたと発表した。タッチ操作できる9.7型の大きな画面、高機能携帯電話『iPhone(アイフォーン)』同様に簡単にコンテンツの配信を受けられる点が評価され、4月3日の米国発売以来わずか80日での突破となった。
 iPadはインターネット接続やメール送受信、映画や音楽、ゲーム、電子書籍などが楽しめる多機能端末。iPhone同様にアップルのソフト配信サービス『アップ・ストア』から22万5000種類以上の娯楽や実用ソフトを利用でき、iPad専用ソフトも1万1000種類に上る」
 iPadは、タッチパネル型のパソコンだが、eBookを読むこともできる。日本の出版界は、eBookリーダーとしてのiPadの話題でもちきりだ。

 いっぽう、アメリカでは、eBook専用の閲覧端末としてつくられたeBookリーダーがすでに普及している。代表的なeBookリーダーには、アマゾンの「キンドル」と、ソニーの「ソニー・リーダー」がある。アメリカでは、キンドルのシェアが60%、ソニー・リーダーのシェアが30%とされている。

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講演終了後、都職員が西田宗千佳氏に相次いで質問し、eBookリーダーへの関心の高さがうかがえた


ソニー向けの電子ペーパーをキンドルが後から採用した理由

 eBookの世界を知るために、僕は西田さんが書いた『iPad vs. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の裏舞台』(エンターブレイン)という本を読んでいた。そこには、eBookリーダーの世界では、実は日本のソニーが先駆者だったということが書かれていた。

「さらに、ここで重要なのは、実はアマゾンはeBookにおいて『ソニーを追いかけた』存在であった、という事実である。
 アマゾンがアメリカでeBookリーダーに関する研究開発を本格化したのは、2004年のことである。そしてこの年は、現在のeBookリーダーの元になった『元祖』ともいえる製品が登場した年でもある。
 その製品を作ったのはソニーだ。(略)
 実は、6インチサイズのE-Ink製電子ペーパーが開発されたのは、ソニーとE-Inkの密接な関係があってのものだった。
『あのサイズは、日本の文庫本を想定してのもの』と野口氏は話す。その証拠は、ディスプレイの『縦横比』にある。日本人にとっては、あのディスプレイの縦横比は非常になじみのあるものだが、欧米人にとってはそうではない。例えば、日本の文庫本にあたるペーパーバックは、文庫本よりも縦が長い。にも関わらず、『アメリカ市場向け』に作られたキンドルが日本仕様の電子ペーパーを採用したのは、E-Ink社がソニー向けに開発した電子ペーパーの生産ラインで生まれた、量産効果が効いてコストがこなれてきた電子ペーパーを採用した結果である」
(西田宗千佳著、エンターブレイン刊『iPad vs. キンドル』より)
 サイズだけでなく、白黒の文字が紙と同じ感じで読むことができる。iPadでは液晶がまぶしいが、キンドルは眼が疲れないので書籍を読むのに適している。


電子書籍を読む人たちは本をたくさん買う「本読み」だ

 日本がリードしているところに、アメリカが参入して、あっという間に世界を席巻してしまった。日本は新技術や新製品において先駆者であるにもかかわらず、市場ではうまく戦えない。世界を相手にした言語技術が不足していることが、やはり影響している。 eBookに詳しい西田さんの講演のタイトルは「電子書籍が出版に与える<本当のインパクト>」。アメリカの最新事情を取材して帰国したばかりのところに来てもらった。

 eBookが「活字離れ」対策として有効なら、これまで読書習慣がなかった層をeBookリーダーが新たに掘り起こしているはずだ。しかし、eBookリーダー利用者の傾向としては、たくさん本を買う「本読み」が多い。言い換えると、そもそも本を買っておらず、本を読む習慣がない層は、eBookも読まない。

 eBookリーダー利用者は、新聞も購読している。定期購読だけでなく、駅売りの新聞を買う機会も多い。何か事件があれば、定期購読している新聞だけでなく、駅売りで他紙も購入して、より多様な情報に触れようとする。

 eBookリーダー非利用者は、お金を払って新聞を読む習慣がない。ニュースはテレビやネットで、無料の情報を仕入れるだけである。

 以上のことから、eBookリーダーは、「本読み」が、かさばる紙の本ではなく、電子的な本を大量に買うためのデバイスになっているということがわかる。本や新聞を読む習慣がない「活字離れ」層を、eBookリーダーはカバーできていない。


「活字離れ」の進む若年層と高齢層へのeBookリーダーの可能性

 しかし、携帯電話やパソコンなど、電子的な手段で情報を入手する習慣は、読書習慣がない層にも定着している。書籍を電子化していかなければ、ますます「活字離れ」は進行する。

 とくに若年層は、紙媒体から情報を入手する習慣がない。10代では、本を読む人と読まない人の二極化が進んでいる。進学校でも本を読まない人は少なくない。

 昔は、若年層はみんな本を読んでいた。大人になれば、仕事などで忙しくなるから、本を読む人と読まない人とが、ある程度分かれるものだった。

 いまは、10代のうちから二極化している。本を読む、読まないという分岐点が、どんどん早くなっている。「活字離れ」する時期が若年化しているということだ。

 eBookリーダーという電子デバイスであれば、若年層にとっても親和性が高い。書籍に触れるいいきっかけになる。

 また、高齢層は視力の低下などで活字が読みにくくなる。読書をする習慣はあるのだが、身体的な負担があるため「活字離れ」が進んでいる

 それに対してeBookリーダーでは、文字の大きさを自由に変えることができるので、高齢層でも負担なく読書を楽しむことができる。電子ペーパーを使っているキンドルであれば、iPadや携帯電話に使われている液晶ディスプレイと違って、画面を長時間見ていても疲れないから、高齢層にとってさらに優しい。


新聞販売店はeBookリーダーをタダで配ったらどうか

 西田さんの話から、eBookが「活字離れ」対策に果たす役割が2つ考えられる。

 まず、「活字離れ」が起きている若年層と高齢層を引き戻すことができる。eBookは、若年層と高齢層が活字に触れるきっかけになる。大人とちがって、10代には“読まず嫌い”も多いはずだから、eBookで読書の楽しさを知る意義は大きい。

 つぎに、「活字離れ」のなかでも「新聞離れ」について、eBookは可能性を持っている。若年層で「新聞離れ」が進行している原因は、「紙の新聞はゴミになるから嫌だ」という感覚と、マンションなどのオートロック化で新聞販売員による営業が行いにくくなっていることが挙げられる。eBookなら、どちらの原因も解消することができる。

 新聞販売店も、洗剤を配るくらいなら、eBookリーダーをタダで配って、かわりに1年間とか2年間の新聞契約をしてもらった方がいいのではないか。特定の新聞しか読めないようにしたeBookリーダーを開発すれば、読者を囲い込めるはずだ。

 eBookに過剰な期待をすることは禁物だが、少なくとも「活字離れ」の進行をくい止める、いいチャンスになるという感触を得ることができた。


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プロフィール

ジュニアスキー

Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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