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スキージャーナル2013年10月号 解体心書 「金子未里」

スキージャーナル2013年10月号 解体心書 「金子未里」

世界を目指して戦う国内のトップレーサーをクローズアップする「レーサーズ・バイオグラフィ」の10月号は、金子未里選手の特集でした。

以下は、抜粋です。ぜひ、全文をお読みください。

「一昨年のシーズンはまだ現状維持することができた。だけど、昨シーズンは本当に苦しかった。挑戦しなければという気持ちばかりが先立ち、挑戦すればするほど苦しい。だけどそのまま突き進むしかなかった。そんなシーズンだった。」

まだ、世界レベルでの実績を残していない選手は、そうした遠征に組み込まれるチャンスはそれほど多くない。それならば、自分一人ででもヨーロッパを転戦しよう。ヨーロッパを主戦場にして、より多くのレベルの高いレースの経験を積まないといけない。そして、そこで数少ないチャンスをつかまなければいけない。そんな思いが金子の中で高まっていった。

すべてはひとりでの戦いだった。レースや宿泊先の手配から車の運転までひとりでこなさなければいけない。レースを終えてすぐに車を飛ばして何百キロも走り次のレース会場へ。着いて翌日のレースのミーティングが終わるともう夜中。そんな毎日が続いた。

それだけ転戦が続けば、当然、満足にトレーニングを行うこともなかなかできなかった。(中略)自分の滑りを煮詰める作業ばかりか、本来の調子を取り戻すこともなかなかできなかった。

「がむしゃらな挑戦を後悔はしていないけど、どこかで止まるべきだった。止まってもあとになって後悔していたかもしれないけど、(中略)。それなのにそのまま突き進んでしまった。周囲からはそうしたアドバイスも受けていたのに、昨シーズンの自分はそれを受け入れる余裕もなかったし、焦ってもいたんだと思う。」

「自分にとって必要だと感じていたことを、最後まで実行できたこと。それは自分にとって大きなプラスになったと考えたい。(中略)この経験がきっと数年後に活きてくると信じて、突き進むべきだと思っている。」

昨シーズンの苦しみはけっして無駄にはしない。そんな決意が金子の歩を進める。


キャプチャ

文章を読んで、非常に分析力に優れた選手と感じました。

シーズン始めに立てた目標に対して、思うような達成度が得られていない状況で、どう行動すれば良かったのか?

結果的には、そのまま突き進んでしまったが、途中で方向転換をした方が良かったかもしれない。

でも、この経験を生かせるように今後も頑張る、という内容かと思います。

確かに、前例が少なく、パイオニアに近い状況の場合、自分自身で分析・判断し、行動していくことが求められます。

そして、その取った判断が果たして正しかったかどうかも、(比較対象がほとんどないので)はっきりしないという状況と思います。

特にスポーツ選手の場合は、最初に立てた目標を諦めずに達成するのが「正しい」ことであり、途中でいったん歩みを止めることや、目標を変更すること、諦めることは、道徳的に「好ましくない」と教育されているケースが多いように感じます。

指導体制がある程度できている場合は、指導者が「適切な目標」と、それを「達成しやすい練習環境」を設定しますから、選手は与えられた目標に向かって「脇目を振らず邁進すれば良い」仕組みになっています。

金子選手の場合は、目標設定から、評価、そして決断まで、自分で行っていたわけで、この挑戦の成否は、選手としての長い経験から、どこまで「自分で考える力」を身につけられていたか、にかかっていたのでしょう。

昨年の結果については、本人は不満足のようですが、では他の選択をすれば、もっと良くなったでしょうか?

これも、(本人を含め)誰にも分からないことです。(だけど、本人が評価するしかない・・)

置かれている環境と、自分の現在の状態を分析し、自分の持っている能力を適切に見積もりながら、目標設定を行い、修正していく。

特に、選択肢がたくさんあり、どれを選べば正解か、についての手がかりが不十分な場合に、どう判断し、どう評価していくか?

本当に難しいことですし、知性が試される部分だと思います。

戦略的には、前例や手がかり(いわゆる根拠)が少ない場合は、突っ走るのではなく、できるだけたくさん振り返る(評価する)機会を持つと良いように思います。

そして、目標を変更するという判断は、決して非難されるべきことでも無いし、良心のとがめを感じる必要も無いわけで、頑なな部分を排して、状況に応じて柔軟に選択肢を変えていくべきことだと思います。

スポーツ選手としての、精神面の「強さ」(はまるとパワーが出る、目標が達成できるまで頑張れる)と「弱さ」(適切な課題設定が自分でできない。状況に応じて柔軟に判断を変えることが難しい)の葛藤を、文章から感じましたので、失礼かとは思いましたが、ケーススタディとして取り上げさせていただきました。

高いレベルを目指す場合、自分で考え、判断し、環境を整え、実行していくことは、必ず必要になります。

ただ上から言われたように練習するだけでは、絶対にトップにはなれません。

選手が自分で「考える力」を、どう育成するか?

日本のジュニア育成で、決定的に抜け落ちているポイントが、ここかもしれません。

でも、金子選手は非常に賢い方だと思うので、あとは、もっと自分に自信を持って、決断に慣れることで、素晴らしい選手、指導者になれると思います。


もう一つ大事なことは、(将来的に)この試行錯誤から得られた貴重な経験を、若い選手達に伝えていくこと。

考える力を伸ばしながら、でも、現実の失敗はできるだけ減らせるような、指導をどう行っていくか。

「管理的」に指導することで、選手の「自主性・自律性」を伸すという考えが最近の主流のようですが、具体的にどう「ルーチン化」すれば、この一見矛盾したテーゼに対して回答を示せるのか?

非常に難しいですけど、取り組まないといけない事項だと思います。

金子選手は、この意味でもパイオニアになれる素質があると思います。

頑張ってくださいね。

追記:

BLOGOSを見たら山口香さんが、似たようなことを書かれていました。

私の文章よりも、多面的に、具体的に、論じていますので、参考になるかと思います。

昨日のオリンピック招致委員会の選手たちはもちろんですが、アルペンスキーでも、代表的な方々、例えば猪谷千春さん、海和選手、木村選手、皆川選手、湯浅選手・・たちは、自分でしっかりと考え、行動できる選手たちです。

文武両道のように、勉強とスポーツの両方ができれば一番良いのでしょうが、最低限、スポーツ以外に、社会常識やマナー、そして考える力を身につける必要があると思います。

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プロフィール

ジュニアスキー

Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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