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「わかりやすい政治」は危険 哲学者・適菜収
「わかりやすい政治」は危険 哲学者・適菜収
2013.7.20 09:12 産経新聞
明日は参議院議員選挙である。
選挙が終わると票を集めることができなかった政党の責任者が登場し「私の不徳のいたすところ」「力不足だった」などと語るのが恒例になっているが、「うまく争点をつくりだすことができなかった」という弁明も散見される。しかし、そもそも「争点」とはつくりだすものなのか?
ここのところよく耳にするのが「政策選択選挙」という言葉である。政党は公約やマニフェストで政策を示し、有権者はそれを参考にして投票するというわけだ。今回の選挙でも「争点」がぶらさげられている。
統治機構の改革か抵抗勢力か、原発ゼロか再稼働か、やさしい社会か強い国か、減税か増税か…。
しかし、当然のことながら、選挙とは代表を選ぶ作業であり、シングルイシューの選択ではない。
二択三択では解決しない問題が存在するからこそ、利害を調整するための政治は必要になる。
フランス革命を痛烈に批判したイギリスの哲学者・政治家のエドマンド・バークは「わかりやすい政治ほど危険なものはない」と言う。二択三択の争点はわかりやすいが、国家が達成すべき目標は一つではないからだ。
「人間の本性はこみいっているし、社会のものごとは、可能なかぎり最大の複雑さをもっている。だから、権力の単純な配置や方向づけは、どんなものでも、人間の本質にも人間の関係することがらの性質にも適合しえない。あるあたらしい政治制度において、装置の単純さがめざされ、ほこられるのをきくとき、私はただちに、その製作者たちが、自分のしごとについてまったく無知であるか、自分の義務についてまったく怠慢であるのだときめてしまう。単純な政府は、いくらよくいうとしても、根本的に欠陥がある」(『フランス革命についての省察』)
フランス革命政府は統治機構の仕組みを単純化し政治にスピードを導入した。その結果については今更述べるまでもない。
バークが指摘するように、小手先の理論で国家を構築すれば地獄が発生する。国家は「はっきりしない、ほとんど潜在的な諸原因」により動かされる。些細(ささい)な判断ミスが致命傷になることもあるし、善意の決断が悲劇を生み出すこともある。よって政治家に必要なのは経験と思慮深さだ。
「抜本的改革」を唱える連中は、威勢のいいことを言うが副作用を考慮しない。結局は歴史に学ばない人たちなのである。
バークは言う。
「すなわち、かれらは、自分たちの思索的なもくろみを、無限の価値のあるものとみなし、国家の現実の装置を、尊重にあたいしないものとみなすのだから、最善のばあいでも、それについて無関心なのである」
少なくともこの200年の歴史に学べば、導入してはならない政治制度くらいは分かるはずだ。
政治家にとって一番大事なものは教養である。それは単なる知識の集積ではなく、歴史に判断の基準を見出すということだ。そう考えれば投票してはいけない政治家像も明らかになってくる。
文部科学省は、大学入試センター試験の抜本的な見直しに向けた検討を始めた。新しい試験でマークシート方式が無くなるかは不明だが、政策選択選挙もお仕舞いにしてほしいものだ。
◇
【プロフィル】適菜収
てきな・おさむ 昭和50年、山梨県出身。早稲田大で西洋文学を学び、ニーチェを専攻する。卒業後、出版社勤務を経て、現在は作家・哲学者として執筆活動に専念。「日本を救うC層の研究」「日本をダメにしたB層の研究」「キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』」など著書多数。
2013.7.20 09:12 産経新聞
明日は参議院議員選挙である。
選挙が終わると票を集めることができなかった政党の責任者が登場し「私の不徳のいたすところ」「力不足だった」などと語るのが恒例になっているが、「うまく争点をつくりだすことができなかった」という弁明も散見される。しかし、そもそも「争点」とはつくりだすものなのか?
ここのところよく耳にするのが「政策選択選挙」という言葉である。政党は公約やマニフェストで政策を示し、有権者はそれを参考にして投票するというわけだ。今回の選挙でも「争点」がぶらさげられている。
統治機構の改革か抵抗勢力か、原発ゼロか再稼働か、やさしい社会か強い国か、減税か増税か…。
しかし、当然のことながら、選挙とは代表を選ぶ作業であり、シングルイシューの選択ではない。
二択三択では解決しない問題が存在するからこそ、利害を調整するための政治は必要になる。
フランス革命を痛烈に批判したイギリスの哲学者・政治家のエドマンド・バークは「わかりやすい政治ほど危険なものはない」と言う。二択三択の争点はわかりやすいが、国家が達成すべき目標は一つではないからだ。
「人間の本性はこみいっているし、社会のものごとは、可能なかぎり最大の複雑さをもっている。だから、権力の単純な配置や方向づけは、どんなものでも、人間の本質にも人間の関係することがらの性質にも適合しえない。あるあたらしい政治制度において、装置の単純さがめざされ、ほこられるのをきくとき、私はただちに、その製作者たちが、自分のしごとについてまったく無知であるか、自分の義務についてまったく怠慢であるのだときめてしまう。単純な政府は、いくらよくいうとしても、根本的に欠陥がある」(『フランス革命についての省察』)
フランス革命政府は統治機構の仕組みを単純化し政治にスピードを導入した。その結果については今更述べるまでもない。
バークが指摘するように、小手先の理論で国家を構築すれば地獄が発生する。国家は「はっきりしない、ほとんど潜在的な諸原因」により動かされる。些細(ささい)な判断ミスが致命傷になることもあるし、善意の決断が悲劇を生み出すこともある。よって政治家に必要なのは経験と思慮深さだ。
「抜本的改革」を唱える連中は、威勢のいいことを言うが副作用を考慮しない。結局は歴史に学ばない人たちなのである。
バークは言う。
「すなわち、かれらは、自分たちの思索的なもくろみを、無限の価値のあるものとみなし、国家の現実の装置を、尊重にあたいしないものとみなすのだから、最善のばあいでも、それについて無関心なのである」
少なくともこの200年の歴史に学べば、導入してはならない政治制度くらいは分かるはずだ。
政治家にとって一番大事なものは教養である。それは単なる知識の集積ではなく、歴史に判断の基準を見出すということだ。そう考えれば投票してはいけない政治家像も明らかになってくる。
文部科学省は、大学入試センター試験の抜本的な見直しに向けた検討を始めた。新しい試験でマークシート方式が無くなるかは不明だが、政策選択選挙もお仕舞いにしてほしいものだ。
◇
【プロフィル】適菜収
てきな・おさむ 昭和50年、山梨県出身。早稲田大で西洋文学を学び、ニーチェを専攻する。卒業後、出版社勤務を経て、現在は作家・哲学者として執筆活動に専念。「日本を救うC層の研究」「日本をダメにしたB層の研究」「キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』」など著書多数。
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