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日本の学生、大学、企業を骨抜きにした就職活動における「負のスパイラル」の正体

日本の学生、大学、企業を骨抜きにした就職活動における「負のスパイラル」の正体

辻太一朗 [大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表]

 みなさんは就職活動の際、大学の「成績証明書」を企業に提出されたでしょうか?

 恐らくされていない方が大半なのではないかと思います。今の就職活動も同じで、特に文系に言えることですが、一部を除くほとんどの企業で大学の成績を採用の参考にはしていません。なぜなら、成績が学生の能力を表す信頼できる指標となっていないため、企業側も学校の成績では学生を評価することができないという現状があるからです。

 つまり、この成績を採用の参考にできない状態が、今の就職活動と大学教育のねじれを生んでいるのです。

 そこで今回は、そのねじれを生んだ就職活動における「負のスパイラル」について、順を追って説明していきます。

企業は成績をあてにせず、面接で合否判断
「勉強より課外活動重視」の学生が増加


(中略)

就職活動で希望の企業から内定を得るためには「勉強より課外活動が大事」という話は、入学したらすぐにサークルの先輩が教えてくれます。

 実際、大学生に、就職と授業に関連してどのような話を先輩から聞いたことがあるかを尋ねたところ、

「就活で成績って見られないらしいよ。ほとんど可の先輩が大企業に内定をもらった」
勉強するより課外活動で変わったことやった方が受かりやすい
自分の経験をうまく盛って話すことが重要
「○○先生は、簡単に単位くれるからとっておくほうがいいよ」

 というような回答が返ってきました。

 ある大学の学生によると、先輩に「どんな授業をとったらいいですか?」聞くと、「楽に単位がとれる授業がいいよ。あとは課外活動やったほうが就活に有利だよ」という答えが返ってきたそうです。

 事実、ある有名大学では、楽に単位がとれることで有名な授業に、毎年定員の5倍もの受講希望者がいるそうです。

 このように、大学生は、楽に単位をくれる授業を選択して、できるだけ課外活動に力を入れるようになります。学生にとっては、授業よりも課外活動に力を入れている方が楽しいし、就職活動を考えるとその方が有利になります。

熱心に授業をするほど嫌われる先生たち
学生はつまらない授業に居眠り、私語


 そうなれば、大学の先生の考え方も変わってきます。

 学生の教育や育成に力を入れようとすると、必然的に事前の課題も出すでしょうし、授業中には学生を指名して質問もするでしょう。また宿題やレポート等を出す必要もあります。それに定期試験も、きっちりした厳正なものになるはずです。中学や高校の授業は一般的にそういうものです。しかし、大学では学生が自分で授業を選択するので、このような先生の授業を学生は選択しない傾向があります。

 このような先生は「厳しい先生」「面倒な授業」などと言われ、選択する学生が減ります。一方で、教育に力を入れれば入れるほど、自分の研究に使える時間が減ります。自分が頑張れば頑張るほど、学生も研究時間も減るのです。

 しかし、毎年同じ講義を一方的に話し、課題も出さず、ある程度出席さえしていれば単位を自動的に出す先生は、自分の授業をとる学生も多く、適当に教育をしているだけなので研究にかけることのできる時間も多いのです。

 これは、ビジネスマンでいえば、仕事に力をいれたら、顧客からは逆に評価は下がってしまい顧客は離れていくようなものです。

 今の大学の授業風景を学生に聞いてみると、授業をまともに聞いているのは前の一列に座っている学生だけだそうです。残りの学生はほとんどがスマートフォンをいじっているか、机に突っ伏して寝ているみたいです。中には先生の声が聞こえないほど、私語の多い授業もあるそうです。それでも先生は何事もないように授業をすすめています

(中略)

 この結果、学生はますます勉強しなくなります。

いい成績なんて何の意味もないんです。学校の授業もつまらないし、毎授業寝て、テスト前になったらとりあえず友達のノートをコピーして暗記することの繰り返しです

 と、都内の有名大学に通うある学生は言います。

学生、大学、企業が個々のメリットを求めることで
「負のスパイラル」が起こる


 今、大学はこんな状態ですから、もちろん企業は学生の成績を採用の参考にすることができません。成績を参考にできないので、面接や自社の実施するテスト等で合否を判断する必要があります。

 そうなると、企業にとってはいつから選考を始めても同じです。4年生でも3年生でも場合によっては2年生で選考しても、結局は自社の面接等で判断する必要があるからです。そうなると、企業はいい人材を採用するためには、早くから多くの人と会う方にメリットがあります。

 また面接で判断する比重が大きいので、詳しい話、具体的な話を学生に聞くようになります。そうなれば学生はさらに勉強しなくなり、課外活動によって面接に対応できるエピソードを作ることに力を入れるようになります。

 これは、学生・大学・企業がそれぞれの状況に合わせて最もメリットがある行動をすることが、結局は他者に影響し、自分の首を絞めるような行動になっているスパイラルの構造です。

 私はこれを就活と教育の「負のスパイラル」と呼んでいます。

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 このスパイラルを繰り返していくことにより、日本の大学生の学力はどんどん下がります。ただでさえ日本の経済が停滞し、大学進学率上昇に伴い大学生の希少価値は低くなりつつあります。国内に限らず、アジア各国でも大学生の数は急上昇しています。

 そんな中で諸外国の学生は目の色を変えて勉強しているにもかかわらず、日本の学生は授業に出てもスマートフォンをいじっている状態です。こうして海外と日本の知的能力差はますます広がっていきます

 では、なぜこのスパイラルはなくならないのでしょうか。

 デフレスパイラルとは、「モノが売れないから値段を下げる」「値下げが企業利益を圧迫し、従業員の給与が下がる」「給与が下がるからモノを買わない」というものです。もともと当事者は自らの置かれた状況に対応して、メリットのある行動をしています。それが回りまわって自らの首をしめているので、なかなか解消しにくいものです。

 それに加えて就活と教育の「負のスパイラル」は、より解消されにくい要素を持っています。それは「当事者がなんとなく楽で幸せ」な状態だということです。学生にすれば、勉強するより課外活動にいそしんでいた方が面白いはずです。それが就職活動において役に立つのならなおさらです。

 学校の先生からしても、時間を割いて学生の指導に尽力するより、毎年なんとなく同じ授業をしていた方が楽です。ましてやその方が自分の研究に時間を割くことができます。企業の採用担当者側からしても、既に確立している採用方法に則ったほうが安心して採用活動にとりくむことができます。

 つまり、当事者である3者(特に学生と先生)にとっては、今がぬるま湯のような状態になっているのです。

 だからこそ、こうした状態が何十年も続いてきました。しかし、アジア近隣諸国が圧倒的成長を誇る現在、日本の学力が低下している状態は非常に危険な事態です。

 これまでの説明で、就職活動の開始時期を変えても、学生が勉強をするようにはならないことはおわかりいただけたでしょうか。日本の大学生(特に文系学生)が勉強するようになるためには、「負のスパイラル」を解消することが重要なのです。


本文にあるように、何十年も続いてきた構造です。

以前は、

①大学名(偏差値)で、その学生の知的能力を判断する。

②大学時代の活動で、協調性や積極性、忍耐力などその人の性格傾向を判断する。

③終身雇用が前提だったので、会社に入ってから、研修あるいは丁稚奉公的に人材を育てる、

というシステムがありました。

社会全体のパイが拡大している時代だったので、機能していたのだと思います。

最近は、高齢化や経済の停滞等と新自由主義の台頭で、雇用等の社会構造が流動化してきています。

大学でも、

④教員の終身雇用制度がなくなり、同時に成果主義が取り入れられてきた。

⑤業績の評価手段として、(文科省の強い指導により)学生による授業評価(教員評価)と研究成果の両方が要求され、評価が悪いと雇用が打ち切られる可能性がある。

⑥一生懸命に授業をして、きちんと成績評価を行う先生に対する学生の評価が下がるのは、本文の通り。(授業を聞いてもいない学生に、教員が評価される仕組みがいかにナンセンスかは言うまでも無いことです)

⑦一生懸命に授業をしたり、大学運営の雑務を行うことで、研究時間が減り、学会参加も出来なくなり、研究成果が上げられなくなる状況に陥ることも、本文の通り。

⑧マスコミの圧力により、講座制が(非人道的と)廃止され、この結果、組織的な研究への取り組みや、蓄積された経験の継承が行われにくくなってきたことも、マイナーポイントとしてあります。

⑨今や理系でも、教育研究が組織でカバーしきれなくなり、⑥⑦が個人に対して効いてくるわけです。

⑩教員が、アカハラ・パワハラのリスクを恐れて、学生に対し近い距離での指導を避ける傾向がある。

⑫大学序列化のトリデであった、入学時の偏差値も、(私学が増えすぎたことによる)AOや推薦制度の主流化によって、評価尺度として当てにならなくなってきた。

この結果、

⑫学生は、お客さんとして、勉強をしようがしまいが、ところてん式に追い出されていく。

⑬企業は、学生採用の基準を失う。

という事態になっていると思われます。

アメリカの制度を、上っ面だけマネして、「改革」と称してきたバカさ加減が、制度の改悪を招いたと思います。(アメリカのように高速道路を無料に、という主張を聞いた時に、あんな穴だらけの高速道路になって良いのかと思いました。本当にアメリカのようにしたいのか、日本の方がはるかに良いのに、と。)

一部の極端な例をマスコミ等がセンセーショナルに取り上げて騒ぎ、これに政府が直ちに反応することが慣例化し、この結果、制度がアンバランスな形で変更されてしまうことが近年増えていると思います。

本文には、解決策は示されていませんが、

●企業は、大学が行う成績評価をもっと信用する。

●教員は、学生に対して、厳密に成績評価を行う。

●学生による教員評価などというバカな仕組みはやめる。(少なくとも専門的な知識を持つ者がするべきです)

を行うしか無いと思います。

社会の余裕のなさが、制度の改悪を生み、余計泥沼にはまっている印象です。

やっぱり、努力したものが報われる仕組みにしないと。

ズルイ人間が得をする教育・社会制度ではいけないと思います。

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Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
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(2009年7月25日開設)


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