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青山学院大学特任教授・猪木武徳 極論避け「より悪くない」選択を

青山学院大学特任教授・猪木武徳 極論避け「より悪くない」選択を

2012.12.20 03:23 [正論]

 慌ただしい年の瀬に断行された衆議院議員選挙が、自民党の大勝利で終わった。これからの国の命運を左右する大事な時機に、戦後史上最低の投票率を記録し、なんと4割を超える国民が自分の意思表示を放棄したのはまことに残念なことであった。「一人一票」というデモクラシーの基本原則が、現実政治を動かそうとする誘因としては薄弱だとする虚無感が有権者を支配したのだろうか。

 ≪最優先課題でなかった原発≫

 12政党乱立の中、政策本位で選ぶと言っても、いくつかの政策課題が入り乱れ、錯綜(さくそう)し、「政策の束」として同時にすべて共感できる政策を打ち出す政党がなかったことも、有権者の足を投票所から遠ざけた原因と推量できる。

 しかし投票率の低さ以外にも、いくつかの不思議な現象を今回の選挙結果は示した。まず選挙の一大争点のひとつといわれた、「原子力発電」の将来的な位置付けについて、国民の意向は、内閣府が今夏に行った原子力発電をめぐる国民の意見に関する調査結果とは必ずしも両立するものではなかったことだ。「脱原発」「卒原発」「原発ゼロ」というスローガンを明示的に掲げた政党よりも、そうした路線に慎重な姿勢を示した政党に票が集まった

 この「矛盾」とも映る現象の解釈はそれほど困難ではない。ひとつは、国民の多くにとって、原子力発電の是非の問題は最優先課題ではなかったということ、さらに、国民は、結局、問題別に選択を迫られれば、「理想的」と思える方を必ず選ぶ、そしてその問題群の間の首尾一貫性については深く考えないということだ。これはしばしば「二重思考(doublethink)」と呼ばれる人間の思考の非合理性を示唆する。

 ≪地方分権と一票の格差の相克≫

 この思考は「地方分権」の大合唱の中にも読み取れた。「地方分権」が大事だということについてはほとんどの人々が同意する。しかし、「一票の格差」という問題になると、選挙区の議員数は人口や有権者数によって決められるべきだという論が強くなる。

 だが、地方のインフラ、伝統と歴史遺産を守る力は、人口(あるいは有権者数)のみで決定されるものではない。それらを整え、保守する力は議員数の減少で弱まる可能性がある。他方、確かに議席配分の極端な格差は多数決の原則による「民意の反映」を阻害する場合がある。いずれにしても、衆議院小選挙区での「一票の格差」が、たとえば高知と千葉の一部では2倍を超え、参議院選挙区では神奈川と鳥取で約5倍という現実を、どのような根拠でもって中間点に調整するのかは、単純な数の論理だけでは語れない。

 優れた地方議会と地方行政を可能にするための人材の配分機能として、地方に定住して地方のために働く人間が、その選挙区から誕生しやすくするためには、ある程度の「格差」はやむを得ない。地方分権の問題を考えるとき、格差、格差と比較するだけでは真の地方分権は確立できない。ここにも、「格差解消」の平等思考と地方分権による中央からの独立を同時に求める、両立し難い「二重思考」が認められるのだ。

 「適度の」「折衷の」という形容詞は、言論やメディアの世界では概して評判がよくない。しかし、政治は理念に燃えながらも、現実的な選択をする人間社会における最も大事で困難な仕事だ。理想だけを語ることはたやすい。政権を取ったことのない政党、取る可能性がない政党のマニフェスト(政権公約)が、説得力のある「正論」と映るのは、この大事さ、重要性を責任を持って認識していないためなのだ。

 ≪「二重思考」からも抜け出せ≫

 その意味では、今回の選挙戦で「極論」が飛び交ったことは、これからの日本の政治への不安感を抱かせるものがあった。特に、安倍晋三総裁が、ほとんど無制限の金融緩和を打ち上げたときにはわが耳を疑った。

 日銀の金融緩和によって供給される大量の紙幣が、日本経済全体に行き渡りデフレ対策の特効薬になる、というようなイメージがまことしやかに語られる。本当だろうか。落ち着いて考えれば、日銀券発行は限界にきているので、日銀が民間銀行から長期国債を買い入れたとしても、その国債は民間銀行から日銀に移動し、民間銀行の準備預金に振り替えられるだけである。それでも無理やり紙幣をばらまこうというのであろうか。

 こうした過激な政策論は幸いにも経済界からたしなめられ、選挙戦中は「超」金融緩和策はトーンダウンした。しかし権力を握るため、あるいは奪回するためには、「極論」も辞さないという手口は決して国のためにはならない

 「極論」は明快で、魅惑の光を一時的に放つ。不完全で、欠陥だらけの現実的な選択肢の中から、いかに「より悪くない」選択をするのかが政治のアートだ。いまわれわれに求められているのは、「二重思考」から抜け出て「極論」を警戒するというバランス感覚なのである。(いのき たけのり)


実に鋭い分析だと思います。

複雑な事象を、一つの側面からのみ切り分けるという、細かいニュアンスや相反するメリットデメリットの存在を無視した単純化が受けています。

橋下さんのツイッターなどがまさにそうなんだと思います。

だけど、そんな単純に物事を解決できることなんて、実際にはほとんどないですよね。

逆にそれによって発生した問題の方が大きくなってしまいます。

普通は、交渉を繰り返し、妥協しながら、合意点を増やし、何とか問題を解決していくのだと思います。

論理だけでない、人間の感情にも配慮した、ネゴシエーションが必要になることも多いです。

そうした、ドロドロした交渉を拒否した、トップダウン型の意思決定は、やはり危険だと思われたのではないでしょうか?


原発に関していえば、10年以内にとか30年までに廃止とか、いろいろ言ってましたけど、多くの人は本当にできるのかなあ、と思いつつ、それよりもこの不況を何とかしてほしいと、考えていたと思います。

マニフェスト詐欺には、懲りた人が多かったと感じます。

選挙前になると、みんながいっせいに卒原発とか脱原発ばかり言い出すなんて、いかにも詐欺っぽいし、そうした政党が、主張がころころ変わったり、細かいところでいがみ合っている様を見て、多くの人は、これはダメだと感じたと思います。

この3年半で、相当壊れかかってしまった日本は、ここで選択を誤ったら、本当に取り返しがつかなくなると感じていたのではないかと思います。

何度も欺されるほど、国民は馬鹿ではなかったと言うことだと思います。

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プロフィール

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Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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