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哲学者・適菜収 正義は法に優先しない

哲学者・適菜収 正義は法に優先しない

2012.8.23 03:09 産経新聞

 社会全体が卑劣になっている。大津市の中2自殺問題をめぐる騒動を見て、そう思わざるをえない。ここで私が「卑劣」というのは加害者とされる少年たちのことではない。被害届を受理しなかった警察でもなければ、いじめを見逃した担任教師や学校、市教委でもない。周囲の対応に問題があったのは誰がみても明らかであり、わざわざここで指摘するまでもない。

 そうではなくて、加害者の少年を批判するやり方が卑劣なのだ。彼らもまた法で守られるべきである。

 「お前は家族が殺されても同じことを言うのか?」という反論があるかもしれない。問題はまさにそこにある。被害者の家族でも親族でもない人間が、「いじめ=悪」という圧倒的な正義に陶酔し、個人的な薄汚い感情を社会に垂れ流す構図が醜悪なのだ。

 テレビ番組ではコメンテーターや芸能人が鼻息を荒くして「関係者を絶対に許すな」と視聴者を煽(あお)り続けた。こうした中、加害者の少年の顔写真や住所をネットで晒(さら)したり、中学校や県知事に脅迫状を送りつけたり、しまいには、大津市教育委員会の教育長をハンマーで殴って殺害しようとした大学生まで現れた。

 その行動の幼さ、卑劣さは、加害者の少年のそれとほとんど変わらない。こうした私刑、集団リンチに「当然の報い」「ザマアミロ」などと拍手喝采している連中も同じである。この手の《正義》ほど愚劣なものはない

 社会正義はあくまでも法の下で達成されるべきものであり、社会正義が法を導くのではない。この順番を逆にしたところにテロリズムは成立する。

 ドイツ出身の政治哲学者ハンナ・アレント(1906~75年)は、革命や全体主義を分析する作業の中で、社会正義と弱者に対する同情、虐げられた者に対する憐(あわ)れみがテロリズムの温床になることを明らかにしている。

 「徳の源泉と考えられた哀れみは、残酷さそのものよりも残酷になる能力を持っていることを証明している」(『革命について』)

 人間は悪のために戦うことはできない。歴史的に見れば、国家=法の破壊は、常に社会正義の名の下に行われてきた。正義の暴走を許せば、人間はいくらでも愚かに卑劣になることができる。そこを革命勢力は狙うわけだ。

 アレントは「徳でさえその限度をもたねばならぬ」というシャルル・ド・モンテスキュー(1689~1755年)の「偉大な洞察」を引用しながら、マクシミリアン・ロベスピエール(1758~94年)の「哀れみに支えられた徳」が、フランス革命をテロに導いた経緯を説明した。

 いじめの被害者に同情するのは勝手である。また、事件に義憤を覚えるのも自由だ。しかし、同情や正義といったもののいかがわしさをいささかでも自覚するのが文明社会の住人の責任ではないか。

 正義を口実に現行法を無視していいわけはない。加害者の少年は法の下に裁かれるべきであり、少年法に問題があるなら改正を目指せばいいだけの話である。同様に、私刑を行った愚民は厳正に処分すべきだ。これが法治国家の原則である。例外はない。(てきな おさむ)



もちろん、日本は法治国家ですから、国家以外のものが(たとえ被害者、あるいはその家族であっても)加害者に罰を加えるわけにはいきません。(ハンムラビ法典(の誤解釈)になってしまいます)

注1:ハンムラビ法典:条文の目的は同害報復を要請するものではなく、無限な報復を禁じて同害報復までに限度を設定することであるので、誤りである.195条に子がその父を打ったときは、その手を切られる、205条に奴隷が自由民の頬をなぐれば耳を切り取られるといった条項もあり、「目には目を」が成立するのはあくまで対等な身分同士の者だけであった。(Wiki)

注2:刑罰:形式的には、犯罪に対する法的効果として、国家によって犯罪をおかした者に科せられる一定の法益の剥奪をいい、その実質的意義は犯罪に対する国家的応報であるとともに、一般予防特別予防をも目的とする。(中略)刑罰を科すことによって、一般人の犯罪を抑止する効果(一般予防論)と、同時に刑罰を受けた者の再犯の予防をする効果(特別予防論)が期待されている。(Wiki)

ただし、多くの人が、①加害少年が少年法によって過度に守られている、②学校側の対応に問題があった、と感じながら、法的にどうにもできないというストレスを感じていることが背景にあると思います。

「罰」よりも「更生」を重視するという少年法の主旨は分かるものの、犯罪の内容がきわめて悪質で、かつ加害者に反省がない(と報道されている)状況で、感情が爆発したのだと思います。

教育長を襲うなどは論外ですが、多くの方が感じている「明らかにおかしいのに、どうにもならない」というストレス感情は理解できますし、同感です。

裁判員制度が導入された理由の一つに、「判決に市民の常識が反映される」というメリットがあったと思います。

同様の考え方をすれば、今回の大津のようなケースでは、「少年法は市民常識・感情に合わない(部分がある)」と言えるのかもしれません。

極端に更生(予防)に偏っているものを、応報的要素も少し加味する方向に修正した方が良いのではないかと思います。

また、何でもかんでもすぐに警察を導入するというやり方ではなく、教師にクラスをきちんとコントロールできる権限を与えた上で、それでも対応できないような悪質なケースは、警察に任せるという対応が良いと思います。

マスコミの過度な煽りが、論点をゆがめているのだけは間違いないと思います。

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プロフィール

ジュニアスキー

Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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