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スポーツ強化は無駄な出費か?

スポーツ強化は無駄な出費か?

事業仕分けの予算縮減で問われる日本人のスポーツ観


2009年12月8日 ダイヤモンドオンライン

 鳩山政権・行政刷新会議による事業仕分けの波がスポーツ界にも及んだ。

 仕分けの対象になったのは、日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化費約27億円と日本体育協会のスポーツ指導者養成事業などの約5億円で計32億円。これを1~2割縮減すべきと判定されたのである。

 この判定に猛反発したのがJOCをはじめとするアマチュアスポーツ界だ。「欧米主要国や中国は年間100億円超の予算で強化を行っている。現状でも日本は少ないのに、さらに減らされたら、メダルは獲れなくなってしまう」というわけだ。

 また、スポーツ関係者の批判の火に油を注いだのが、仕分け作業時に仕分け人がアマチュアスポーツ界を統括する文科省担当者に言った言葉。「オリンピックは参加することに意義があるのではないか」、「ボブスレー、リュージュなどのマイナーな冬季競技を支援する必要があるのか」である。

自国の勝利を追求することは
国民全体の活力にもつながる


 不透明だった税金の使途を明確にする事業仕分けが行われたことは評価したい。だが、このような感覚の持ち主が縮減を判定するのはやはり問題だろう。

 参加することに意義があるという発言には、勝てなくてもいいというニュアンスがある。この言葉はIOC二代目会長クーベルタン男爵の語ったものだが、後段があって「ただ勝てばいいのではなく参加し勝つための努力をすることが重要だ」と言っているのだ。勝たなくていいから強化費を縮減するでは、その努力さえ満足にできなくなってしまう。

 また、自国の勝利を追求することはナショナリズムにつながるから良くないといわれることがあるが、オリンピックやワールドカップに代表される国際大会では、どの国の国民も例外なく自国のチームや選手の勝利を願い、熱烈に応援する。それは自然なことで、スポーツの国際大会の中でそうした感情が消化される限りにおいては、何の問題もないはずだ。

 日本スポーツ界の功労者のひとりに競泳の古橋廣之進氏がいる。今年8月に亡くなったが、その古橋氏に次のような逸話がある。戦後間もない昭和23年にロンドン五輪が開催されたが、敗戦国の日本は参加が認められなかった。その決定に納得がいかなかった日本水泳連盟は、意地を見せてやろうと五輪と同じ日程で日本選手権を開催。この大会の400mと1500mの自由形で、古橋氏はロンドン五輪の同種目の金メダリストを上まわるタイム(ともに当時の世界記録)で泳いだ。この快挙に国民は熱狂し、敗戦で失った自信を取り戻したといわれる。

 終戦から19年後には東京オリンピックが開催された。この大会は先進国として国際社会への復帰を意味したし、アメリカ・ソ連に次いで獲得した16個の金メダルは国民を元気づけた。高度経済成長を推進する活力になったといえる。

 時代が違うといってしまえばそれまでだが、今だって暗いニュースばかりの中、国際大会で日本選手が活躍すれば明るい話題として取り上げられ、人々の表情もほころぶ。その熱気が市場を活性化するケースもある。スポーツを強化し勝利する効果はあるのだ。

遠征も選手の自腹が多い
マイナー競技ほど支援が必要


 マイナー競技は支援する必要があるのかという発言も、多くの競技関係者の気持ちを逆なでした日本では野球やサッカーなどプロがあるスポーツ以外はすべてマイナー競技といっていい。今回はボブスレーとリュージュが引き合いに出されたが、過去にメダルを多数獲っているスキー・ジャンプ、ノルディック複合、モーグル、スピードスケートなども普段は注目されることが少ない競技だ。

 夏季オリンピックで活躍が目覚ましい女子レスリングにしても、室伏広司のハンマー投げ、太田雄貴のフェンシングにしても競技人口は微々たるもの。それでも非凡な才能が出現し、情熱ある指導者が適切なコーチングをすれば世界のトップレベルになれる。ボブスレー・リュージュだってその可能性はあるわけで、部外者が線引きなどできないのだ。

 また、そうした選手の多くが厳しい環境で競技生活を送っている。日本のトップに上り詰めるまでは周囲の人々(とくに親)の支援に頼っている状態。強化指定選手になってやっと国からの補助が受けられるが、五輪や世界選手権などの国際大会以外の遠征(海外を含む)は自分持ちということが多い。どん底不況の今は企業のサポートも望み薄で、生活の不安を抱える競技者も少なからずいる。マイナー競技の選手ほど国の支援が必要なのだ。

 トップ選手の強化とはずれるが、競技団体もギリギリの予算で運営されている。筆者があるマイナー競技の団体に資料を調べに行ったところ、渡されたメモはカレンダーの裏を使っていた。資料のコピー代も当然だが有料。活動や強化状況、競技会の記録などを掲載する会報もスポーツメーカーやショップ、その競技を支援する企業の広告が多数入っていた。自助努力をし、なんとかやり繰りして運営しているのである。

 そうした実情を見ていると、現場を知らない人たちがあっさり予算縮減の判断を下すのは納得がいかない。

 ただし、スポーツ界側にも問題がないわけではない。国庫補助以外の活動費「スポーツ振興基金」や「サッカーくじtoto」を運営している「日本スポーツ振興センター」は文科省OBの天下りの受け皿になっている。

 競技団体の多くが政治家(大半が自民党)を会長に据え、その政治力に頼った補助金獲得競争が行われてきた。今回の事業仕分け騒動では競技団体関係者が「民主党ともパイプを作らなければ」と語っていたが、そうした利権構造がまかり通っている証拠だ。競技力はどれだけ資金をかければ結果につながると数値化できるものではないにせよ、予算の使い方にはあいまいな部分がある。そうした古い体質を温存しているのがスポーツ界なのである。

予算縮減もやむなしという
世間の冷淡な反応が気になる


 アマチュアスポーツ界を支えている財源は国庫補助以外にもスポーツ振興基金やtotoがあるが、使途が重複して明確でないのも問題だ。それこそスポーツ界が予算の仕分けをし、「ここは自分たちでなんとかしますから、この部分は国の支援をお願いしたい」という姿勢があれば説得力も生まれる。また、税金の補助を受けている以上、スポーツ界の現状や国民にどのようなメリットをもたらしているかを広報することも必要だ。スポーツ界側も改善すべき点は多々あるのだ。

 また、他にも縮減の余地がある事業もある。たとえば国民体育大会(国体)。大会開催には主催する日本体育協会や自治体に国から約32億円の補助金が出ている。国体は各都道府県が持ちまわりで開催され、それを機に各地のスポーツ環境が整備される効果はある。アマチュアスポーツ選手にとっては大きな目標でもあり、なくすわけにはいかないだろう。

 だが、最近では注目する人は少ないうえ開催県がほぼ総合優勝するという悪弊も続いている。スポーツの全国大会というより各県のプライドを示す場となっているのだ。こうした問題を見直しスリム化することを考えてもいいのではないだろうか。

 それにしても今回気になったのはこの騒動に対する世間の反応である。予算縮減が是か非かの議論はほとんどなく、「縮減もやむなし」という冷ややかなものに感じられた。未曾有の不況下、自分のことで精一杯でスポーツ界の浮沈などどうでもよくなっているのか。成熟社会になり国民がこぞってスポーツの結果に一喜一憂する熱気は失せてしまったのか。妙に冷めている。だが、それでいて日本が国際大会で無様な成績に終わったりすれば批判する声は湧きあがるはずである。

 はっきり言ってしまえばスポーツは娯楽であり余裕の産物だ。多くの競技が英国の有閑階級によって始められ、統括組織やルールが出来たことで発展した。そこからはアマチュアリズムという概念が生まれ、派生したプロとは一線を画す考え方が今も残っている。

 その理屈からいえば大不況下で余裕のない現在はスポーツなどなくてもいいわけだ。が、スポーツの強化は長い時間がかかる。指導者が去りトップ選手が出なくなれば、選手への憧れから競技を始める子どもたちも少なくなってしまう。強化の流れが途絶えると弱体化のスパイラルに陥るのだ。そうなってから候悔しても遅いのである。

 事業仕分けはあくまで判定であり決定ではない。縮減という判定が決定になるのか。日本人のスポーツ観が問われることになる。


上段では、「スポーツは必要」と主張し、下段では「スポーツは娯楽であり余裕の産物」と自ら認める。

なんだか良くわかりませんが、「あんな分けわからない政治家に仕分けされてたまるか!」という強い意志は感じます。

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プロフィール

ジュニアスキー

Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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