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川澄奈穂美を育てた、“世界一のオヤジ”の教育法とは?=女子サッカー

川澄奈穂美を育てた、“世界一のオヤジ”の教育法とは?=女子サッカー

■なでしこジャパン、窮地で監督に進言

 2011年7月17日。サッカーの日本女子代表“なでしこジャパン”は、ワールドカップ(W杯)決勝の舞台に立っていた。1ー1で迎えた延長前半14分、対戦相手である米国のエース、ワンバックに勝ち越しゴールを許すと、なでしこジャパンは窮地に追い込まれた。

 その直後だった。1人の選手がベンチに駆け寄り、佐々木則夫監督に次のように進言した。

「わたしがサイドハーフ、(丸山)桂里奈さんがFW。ポジションを元に戻していいですか?」

 この直前にポジション変更を指示していた佐々木監督は、いわば自分の采配に対する反対意見を選手から聞かされたわけだが、それでも静かにうなずいた。
「わかった。そうしよう」。そう短く伝えた佐々木監督も、実は同じことを考えていた。
「同点の場面と、1点追いかける場面では、選手に求める役割も変わる。ポジションの入れ替えを指示しようと思った矢先に、選手のほうから提案されたわけです」
 佐々木監督は、遠慮なく自分の意見を伝えてきた背番号9、川澄奈穂美の姿を見送りながら、彼女と最初に出会った時のことを思い出していた。「やはり頼もしい選手だ」と。

 佐々木監督が初めて川澄のプレーを間近で見たのは、06年のことだ。なでしこジャパンと、将来のなでしこジャパン候補生を集めた「なでしこチャレンジプロジェクト」との合同合宿が行われ、川澄はチャレンジプロジェクトの選手として、佐々木はなでしこジャパンのコーチとして参加していた。

「チャレンジ組」の大半は、代表レベルの高度なプレーを「教えてもらおう」とし、コーチの指示通りにプレーしようと必死だった。ただ、川澄だけは、プレーを諭され「わたしは今、こういう意図でプレーしたんです」と食い下がった。
「女子選手でこれだけはっきりと、理路整然と、意見を伝えられる選手は珍しい」。佐々木は後に監督に就任すると、迷わず川澄をなでしこジャパンに引き上げた。

 W杯決勝は、延長後半に澤穂希のゴールで追いついたなでしこジャパンが、その後のPK戦も制した。初の世界一に輝いたその瞬間を、神奈川県大和市内のパブリックビューイング会場で見届けた1人の男性は、興奮を隠さず絶叫した。

「世界一のオヤジになったぞ!!!」

 テレビでも新聞でも繰り返し紹介された、この雄たけびの主は川澄奈穂美の父、守弘さんだ。

■「教えない指導法」で開花した才能

 世界一のオヤジは、いかにして世界一の娘を育てたか――。

 体育教師の資格を持ちながら、あえて教員にならなかったという守弘さんは、本人の言葉を借りれば「教えない指導法」で娘の才能を育んだという。
「キックの蹴り方などの“型”を、大人が教える必要はないんです。大きなけがや事故につながりそうな危険な行為にだけ注意を与えれば、そのほかは子どもの自由にやらせればいい」

 守弘さんは、奈穂美が幼稚園児だったころにサッカーボールを与えただけで、好きなように遊ばせていたという。それでも奈穂美は、小学校2年生で地元の少女チーム「林間SCレモンズ」に入団したころには、ボールの止め方、蹴り方をある程度身につけていた。誰かに矯正されることなく、自分の感覚で身に付けた技術は、現在のプレーにもつながる彼女の財産になった。

 また、川澄家は毎年、家族でスキーに出掛けていた。奈穂美を初めてゲレンデに連れて行った時、守弘さんはやはり大けがをしないためのポイントだけを注意すると、目の前で一度滑ってみせた。あとは「さあ、やってごらん」の一言だけ。奈穂美が転倒しようと、とんでもない方向に行ってしまおうと、見守るのみだ。「教えない指導法」でスキーを習得した川澄は、後にスキー検定1級を取得している。なお、「体幹の強さ、バランスの良さは、スキーのおかげでもあるかな」とは、守弘さんの分析だ。

■スタミナ、自主性も自然と身につける

 さらに、川澄の長所として頻繁に挙げられるのは、無尽蔵のスタミナだ。なでしこジャパンが時折実施する持久力テストでは、毎回ぶっちぎりでトップの成績をたたき出す。チームメートが顔をゆがめて続々と脱落してもなお、川澄だけはニコニコしながら走り続けている。「どうやってスタミナをつけたのか?」と本人に問うと、「思い当たるとすれば、母と走ったことぐらいかな」との答えが返ってきた。

 川澄の母、千奈美さんも、守弘さん同様スポーツ愛好家で、ホノルルマラソンの完走経験もあるという。ひと月に200キロを走り込んだこともあるといい、その当時10歳前後だった奈穂美も一緒に走っていたそうだ。
「家の近くに約5キロのジョギングコースがあったんです。なーちゃん(奈穂美)は毎日、夕食前に私と一緒に走ったんです。スピードは大人の私と同じでしたよ」

 川澄家の「教えない指導法」は、娘の自主性を育むのにも大いに役立った。冒頭に引用したW杯決勝での「進言」シーンが示す通り、川澄には、指示されるのを待つのではなく、「自分で考える」「考えを行動に移す」という習慣が子どものころから自然に培われていたのだ。

「たとえばスキーに行く前の晩、親から言われる前に、用具も着替えも全部自分で用意していました」と守弘さんが言えば、林間SCレモンズの加藤貞行代表も、小学6年生当時の川澄を、懐かしそうに振り返る。

「小学生のサッカー大会では、保護者や指導者たちは大会運営に追われて忙しいんです。そんな時、うちのチームは『ナホ、頼んだぞ』と彼女に伝えるだけで、試合の準備はできました。ナホは対戦相手を観察して、先発メンバーやフォーメーション、戦術までを決めてくれました。試合中に監督に向かって選手交代の指示を出したこともあったぐらいで(笑)。そうやって、子どもたちだけで勝っちゃった試合もあるんです」

■すべて「自分」で生きてきた川澄

 先述したとおり、川澄の父・守弘さんは、教員免許を持ちながら教員の道に進まなかった。こうして娘とのエピソードをつむいでいくと、彼の教育方針の根底には、学校体育(および日本の人材育成)が陥ってしまった「マニュアル主義」へのアンチテーゼ(正反対の命題)が浮かび上がってくる。枠にはめて、詰め込んで、言うことを聞かせるのは、スポーツの本来の在り方からも、人が育つ過程からもかけ離れていると、守弘さんは考えているに違いない。事実、彼は世の中に対し、こんな心配を口にする。

「サッカーだけじゃなく、すべての面で親や教師が口を出し過ぎているように思います。それで子どもたちが幸せになっていればいいのですが……」

 言うなれば、川澄奈穂美とは、大人が管理しやすいマニュアル教育の対極で、自ら問題意識を持ち、自ら目標を掲げて努力してきた存在だ。だからこそ、自分の長所に自信を持ち、自分の限界を自分で知り、限界を超える解決法も自分で考えることができる。
 それは、ただ苦しみに耐えるのではなく、「わたしにはできる」と信じてピッチに立つ、なでしこジャパンのイメージそのものだ。

 そして最後に、娘に向けて父は短くエールを送った。
「五輪を楽しんでほしいです。どう準備するかは、昔から娘に任せていますから」

<了>
上野直彦
1965年生まれ。兵庫県出身。女子サッカーの取材を続けており、少年サンデーで好評連載、単行本化されている『なでしこのキセキ 川澄奈穂美物語』の原作者でもある。ロンドン五輪後になでしこ選手の書籍が発売予定。女子W杯日本招致運動は今年で8年目である。
Twitter ID: @Nao_Ueno

江橋よしのり
1972年生まれ。茨城県出身。フリーライター。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。近著に『世界一のあきらめない心』(小学館)など。なでしこジャパン佐々木則夫監督の著書『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(講談社)や、澤穂希選手の著書『夢をかなえる。』(徳間書店)の構成を担当
Twitter ID: @ebashi_y


親やクラブが何もしなくても、子供が独力で日本代表になれるのであれば、、それは(性格も含めた)素質があったのでしょうね。

事実関係に間違いがないとしても、果たしてどこまで一般化できる話なのか?

戦前の儒教式、タイガーマザー式教育論と欧米式の自主性・主体性尊重教育論の枠組みで説明できる話ではあると思います。


男子サッカーの育成システムでいえば、エリート選手は、Jクラブチームの下部組織(ユース)で日本代表まで目指すルート、そこに上手く乗れなかった選手は、サッカーに力を入れている高校・大学の部活でJリーグ入りのチャンスをうかがうシステムのようです。(敗者復活が可能な仕組み)

Jリーグ発足後、育成システムが整備され、コーチの能力もアップしたおかげで、毎年毎年、子供達が上手くなっているようです。

基本技能の向上はもちろん、小学生で組織的戦術が実行できるぐらいの恐ろしいレベルに達しているようです。

欠点としては、これまでは高校卒業後ぐらいで伸び悩むケースが多かったようですが、これもJ2が若手の育成の場として機能するようになってきたことと、レンタル移籍が当たり前になり、所属チームが若手選手を試合に出場できるようなJ2チームなどに貸し出して、実戦経験を積ませる方針をとりだしたことで、解消してきているようです。


下は、小学生の試合。



信じられないぐらいの上手さです。

毎日ナイターで練習してますからね。

素質のある選手が多くいて、育成の環境も整ってきて、ピラミッド型の育成システムが取れている理想的な形です。

サッカーは、しっかりした方針がありますから。

うらやましいです。

SAJは、川渕さんにお願いして会長になっていただいた方が良いと思いますよ。

彼なら立て直せます。


ただ、組織内で対立を解消できず、訴訟を起こし、最高裁まで行って、判決が確定(原告敗訴)しながら、組織内に居座るようなことがあれば、川渕さんでも立て直しが難しいでしょうけど。(笑)

SAJの運営が麻痺することが当然予想できるにもかかわらず(むしろそれを狙って?)手続き論を理由に訴訟を起こし、その通りに数年間にわたり機能停止を引き起こしたわけですからね。

SAJを人質に取った訴訟を起こしただけでも罪が重いのに、敗訴したわけですから、当然責任を取りますよね?

こんな手続き論(内部対立で劣勢側がそれを逆転する手段として起こしたことが見え見えの些末な事案)で本当に訴訟に勝てると思ったのならば、あきれるほど見通しが甘いと思います。

SAJ側が高裁に持って行った時点で負けでしょう。

ただ混乱と対立を深めただけで、なんの解決の方向性も示せなかった、本当に馬鹿な人たちです。

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プロフィール

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Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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