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TURNING POINT 萩原智子さん [元水泳選手]

萩原智子さん [元水泳選手]

TURNING POINT, 水泳 2008年07月01日

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1.中学、高校時代の萩原選手

─中学、高校時代、萩原さんは学校の部活動で水泳部に所属していたのでしょうか?

萩原智子さん 水泳部もありましたが、学校にプールがないので、それぞれのスイミングクラブで練習していました。放課後に学校で練習するいわゆる部活生活とは違いますが、一緒に練習しているのは小さい頃からやっていた仲間ばかり。朝から練習をして、学校でのクラスも同じ、それからの練習も一緒なので、家族よりも長い時間を過ごす大切な存在でした。
水泳部以外でも、高校で3年間同じクラスになった体操部の友達との出会いという財産もありましたね。彼女も当時の私と同じように日本一を目指していたのですが、それまで「日本一」を目指している人は周りにいませんでした。同じ目標を持ち合える存在だから、いろいろな話をしたし、お互い励まし合って3年間頑張れたのだと感じています。

──実際には1日にどれぐらい練習していたのでしょうか?

萩原智子さん 中学に入った頃は、朝練習が週6回ありました。5時にプールに行って、5時30分から8時ぐらいまで練習。放課後は17時30分から21時ぐらいまでプール。その繰り返しでしたね。一度冬場の苦しい練習をしていたときには、プールに行ったら私とコーチしかいなくて、2人でプールにかけた重たいシートを30分ぐらいかけて引き上げたこともありました(笑)。
実は中学時代には私もサボったことがあって、あまりにノルマがきつかったので、わざと目覚まし時計をセットしませんでした。そうしたら朝6時頃コーチから電話がかかってきた。当然怒られると思いますよね。そうしたら「どうした? 何かあったかと思って心配したぞ」と言われたのが逆にショックでした。私もつらいけれど、コーチも毎日の朝練習前にはみんなが寒いだろうからと、もっと早く着てボイラーを炊いたりしてくれているのに、そういう気持ちも全部裏切ったと思いました。
目標を立てて頑張るとしているくせにサボったこと自体にも後悔の念があって。それからすぐにプールに行って練習をしました。あの頃のことは、とても印象深いですね。

2.インターハイ3連覇!!!

──萩原さんは小学校6年生から「日本選手権」に出場されています。日本トップ選手として大会に出場しながら「インターハイ」に臨むわけですが、インターハイは萩原さんにとってどのように位置づけられていたのでしょうか?

萩原智子さん 高校のインターハイだけは特別でした。「インターハイ」というブランドがあるし、そこで優勝することが夏一番のメインイベントでした。日本選手権も勝ちたいけれど、インターハイはそれ以上に勝ちたいと思っていましたし、ステータスがありました。

──その舞台で3年連続優勝なさっていますね。

萩原智子さん よくご存知で(笑)。その時々で、いつも思い出があります。
1年目は地元の山梨開催だったのですが、インターハイの意味もわからず、ただの全国大会だと思って泳いで何が何だかわからないまま勝っちゃった。
2年目になるとインターハイの重みを実感していたうえで「勝ちたい」と思っていたから、気持ちに余裕がありませんでした。スイミングクラブのコーチは、高校の教諭ではないのでインターハイには同行できません。不安で仕方なかったので、試合前に泣きながらコーチに電話をしたら「やってきたことをそのままやればいいし、勝てなくても誰もお前を責めないから」と言ってくれた。その言葉がありがたかったですね。自分にも期待しているけれど、周りを気にしすぎていたので、そのひと言で楽になれました。
3年目はなぜか自信がありました。3年生の貫禄なのかな(笑)。試合の1週間程前に高熱を出して調子が悪かったのに、それでも「私は勝てる」と思っていたし、「勝たないといけない」というのがプレッシャーではなく、いいモチベーションになっていました。3連覇できたのが何より嬉しかったですね。たまたまそのときに、顧問の先生が入院していたので、みんなで「先生のためにも頑張ろう」とまとまって、ものすごく青春していましたよ(笑)。

3.スランプからの脱出

──では当時を振り返って、つらかったことは何でしょうか?

萩原智子さん ベストが出なかったことです。インターハイで勝負に勝つことはできましたが、タイムは全然よくなかった。中学3年のときに出した記録をずっと破れなかったのが苦しかったです。タイムが出ないと、気持ちもなかなか前に進めないし、どうしたらいいかわからない。当時はコーチとも随分とぶつかりました。中学3年で出したタイムが歴代2位だったので、周りも「オリンピックだ」と騒ぎ立てたし、私自身も「あのタイムを出したから、もう練習しなくても大丈夫」と天狗になっていました。でもコーチはそういう私の態度もわかっているから、本気で怒るわけですよ。プールで泳ぐ私に向かって投げてきたビート板を、拾って投げ返していたし、「帰れ」と言われたら「ラッキー」と思って帰ってしまうし(笑)。今思えば最悪ですよね(笑)。
でも、結果としてはそれだけぶつかり合う時間があったから、コーチとの信頼関係を築くことができたのだと思います。もちろんぶつかるだけがいいということではありません。私がそうだっただけで、それぞれによってその方法も違います。大切なのは、お互いが向き合えるための時間だったと思います。

──確かに、指導者と選手の信頼関係は大切ですね。

萩原智子さん 最近の話を聞いていると、高校生や中学生に嫌われたくないから怒らない指導者が増えているのかなと感じることがあります。私の場合はコーチが真剣に怒ってくれたから、水泳に対しても正面から向き合えたし、自分にとって大きな存在なんだと確認作業をすることができました。
怒られたり、何かを言われると落ち込むこともありますが、そこで考えることが大切だったし、天狗なままでいたら、確実に今の私はいない。コーチだけでなく、苦しいときに私が「水泳をやめたい」と言ったら、本気で怒ってくれた友達もいました。そういう1つ1つのことが嬉しかったし、支えられてきたのだと思います。

──苦しいことがあってもやめずに続けることができた理由は、周囲の力が大きかったということでしょうか?

萩原智子さん その通りです。私は本当に周りの人たちに恵まれていて、家族、友達、コーチ、みんなに支えられていました。家族にはプールに行くために毎日送り迎えをしてもらったり、お弁当をつくってもらったり。タイムが出ない苦しいときだからこそ試合に応援しに来てくれたり。いつも助けられていました。
でも、ありがたかったのは、支えることの1つとして私をきちっと怒ってくれたことです。たとえば、テストでとんでもない点数を取ってしまって、それを隠していたら(笑)、母が「こんな点数を取るなら、もう水泳なんてやめなさい。水泳しかできないなら、続ける意味がないでしょ」とものすごく怒って。それからは必死で授業を聞いて勉強しました。
周りの人たちがいなかったら、確実に水泳をやめていたと思います。

4.萩原智子のターニングポイント

──では、そのなかで萩原さんご自身の「ターニングポイント」を挙げるとしたらいつでしょうか?

萩原智子さん 中学3年から高校1年の反抗期時代を経て、高1の夏に迎えたアトランタオリンピックの選考会です。それまでは「オリンピックに出たからって、それが一体何なの」と言っていたし、言葉では「オリンピックを狙う」と言っていたけれど、実際にそれが何かはわかっていなかった。それだけの覚悟もありませんでした。でも、アトランタの選考会を3位で終えて、それからベストも出ないし、勝てない。そこで本気になりましたね。大げさではなく、高校1年の地元インターハイで優勝したときに、「アトランタ(オリンピック)に行かなくてよかったな」と思いました。「今の私は、オリンピックに出る選手じゃない。この時間があって本当によかった」ということを強く感じました。その時点で次のシドニーオリンピックが見えていたわけではありませんでしたが、目の前のことを1個1個やっていかなければダメだと思ったし、コーチとも話し合ってこれからどうするか、どうしたいかということを真剣に考えた時期だったと思います。

──うまくいかなかったからこそ、多くのことが見えたわけですね

萩原智子さん ピンチはチャンスになると思います。失敗や苦しいことがピンチなのだとすれば、そこから得るものは、次は絶対にいいことになる。ダメなときほどチャンスに変えられる。うまく行かないときはバネをグッと縮めておけば、ジャンプアップできるときに思い切り伸ばすことができる。
私もあの頃、その時間を過ごすことができていなければ、それから記録を伸ばすことも、オリンピックに行くことも、大学院まで水泳を続けられることもなかったと思います。

──では最後に、現在部活動を頑張っている中学生・高校生へ萩原さんからメッセージをお願いします。

萩原智子さん 私も当時は散々苦しみましたし、そのときは「自分だけが苦しい」と思ってしまいがちですが、決して1人じゃない。苦しいときこそ周りへ目を向けて、いろいろなスポーツやいろいろな分野の人たちと交流することで、見えてくるものが絶対にあると思います。そういう出会いを大切にしてほしいし、繰り返すようですがピンチはチャンスだから、自分の夢があるなら思い続けること。苦しいことがあれば絶対に笑えることがあるし、幸せなことがやってくるからそれを信じて続けてほしい。努力は裏切らないと思います。たとえ自分が思った結果が出なくても、一生懸命努力して、一生懸命な気持ちで続けてきていれば、結果の受け止め方も違うはずです。
日常生活で学ぶさまざまなこと、苦しいこと、悲しいこと、耐えなきゃいけないこと、我慢しなきゃいけないこと、嬉しいこと、仲間の大切さ。そのすべてを学べるのが部活だと思うので、今とても大事な時間を過ごしていると感じてほしいし、幸せだと気づいてほしいですね。みなさんがうらやましいです。

──本日はありがとうございました。

(取材・文/田中夕子  写真/小山基彰)


素晴らしいインタビューです。

読んでいて本当に嬉しくなりました。

ぜひお子様達にも読ませてあげて下さい。

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Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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