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「タイガーマザー」と「文武両道」

「タイガーマザー」と「文武両道」

過去に何回か触れてきた「タイガーマザー」(こちらこちらこちらを参照)。

その(中国式と称する)スパルタ教育のエキセントリックさ故に2011年にアメリカで大論争を引き起こしたイェール大学のエイミー・チュア教授の著書です。

彼女は、2人の子供に対して厳しい教育を施した結果、娘さんは音楽でも学業でも超一流の成功を収めたとのことです。

◎タイガー・マザーの教育方針
1.子どもにとって何が最も良いかを知っているのは親しかいない。
2.何かに秀で、特別上手にできるようになるまでには辛い「練習」を経なければならない。上手にできるようにならない限り、楽しむ域にはいつまでたっても到達しない。
3.子どもの自主性に任せる欧米の自由放任主義の親は、子どもの自己評価(セルフ・エスティーム)を心配して途中で止めることを許可してしまうが、辛さを通り越してあることができるようになることほど子どもの自己評価を高めるものはない。
4.最初は強制されても、うまくできるようになると、それが子どもの自信になり、やがてそれが好きになるという好循環が生まれる。

(本の紹介文より)

ただ、そのやり方が子供の自由や自主性を奪うものであったために、アメリカ人には相当カチンと来たようです。(チュア氏もアメリカ生まれですが)

最近は、経済のみならず、学業(の国際比較)やスポーツ、囲碁などの世界でも、中国や韓国に抜かれつつある日本の現状から、この論争は米国における教育論争としてだけではなく、日本のスポーツ選手育成においても参考になる点があるのではないかと考えています。




以下は、KYM中国語教室「書籍紹介-「TIGER MOTHER(タイガー・マザー)」」からの引用です。

本書ではエイミーが性格の異なる二人の娘に、学業を始め、長女にピアノ、次女にピアノとバイオリンを習わせていました。従順で呑み込みの早い長女に対して、次女は「野生の馬を手なずけるような子」でした。そんな性格の二人に、どんなリスクも厭わないタイガー・マザーエイミーは、人に「そこまでやるの?!」と思わせるようなエピソードを本書にたくさん綴りました。彼女の揺るぎない信念と覚悟により、結果的に、二人の娘はともに学業優秀、ピアノとバイオリンでも超一流の腕前を身に着けるようになりました。

(中略)

私が驚いたのは、著者のエイミーは、アメリカ生まれとはいえ、本土の殆どの中国人以上に、親の世代のやり方を引き継ぎ、彼女の個性的な性格によって中国式英才教育をタイガー・マザー式として極端化しました。
 
タイガ・マザー方式は無論過激的ですが、その過激な教育方針に隠されたメッセージはなんでしょうか。

エイミーの両親の第一世代というのは着のみ着のままでアメリカに移民し頑張ってきた世代で、彼らはすさまじい努力で成功をものにしました。その恩恵と厳しい教育を受け、社会で良い地位につくことができたのが第二世代です。そして生まれながらに富と自由を享受し、ちょっと気が抜けてしまう第三世代はエイミーの娘たちにあたります。中国の古い格言に「富不出三代(繁栄は三世代続くことはない)」というものがあります。エイミーは両親からしっかりとその教えを受け、第三代の娘たちに対して危機感を持っていたのではないでしょうか。

 一方、エイミーの夫のジェドはユダヤ系アメリカ人で、同じイェール大学法科大学院教授で推理作家でもあります。本書は、中国系アメリカ人の子育てを通して描かれた母親と二人の娘の物語であり、家庭内において欧米と東洋の文化および教育の衝突の話しでもあります。

 自由放任主義の欧米スタイルにタイガー・マザー方式は真っ向から突っ込みました。 小さいこどもには選択基準もないしわかるわけがないのだから、すべて親が選択し道を切り開いてやるのです。最初は強制ですが、やがて成功したらそれが自信になり、子供はやがてそれが好きになるという好循環が生まれます。しかし、失敗した場合は、本書の中でも、次女に対して、後半のタイガー・マザーは無意識のうちに厳しい教育方針を「中庸の場」に持って行ったように思います。


とても納得できる意見です。

我々の親の世代は、大変な努力によって、戦後の廃墟から奇跡の復興、そして高度成長を成し遂げました。

その世代には著名なバレーボールやレスリングのコーチ達もおり、工夫を凝らしたスパルタ練習で選手を鍛え上げ、オリンピックでメダルを獲得していました。

我々が第2世代だとすると、アメリカ式の自主性を尊重する戦後教育の結果、価値観の相対化が測られ「自分はこう思うよ。自分だったらこうするよ。後は自分で決めてね。」という意見しかできなくなりました。

危機感を持ちながら、他人に強制・命令できないようしつけられた(ので問題解決が図れない)という非効率性のジレンマに陥っています。(逆に言えば民主的)

すり込まれた価値観を捨て去る決断もできずに、明確な教育の方向性を出せない状況にあります。

そして、第3世代が我々の子供たち。

もう、我々親がフワフワしてますからね。

感じるのは、第2世代から第3世代にかけて、「実直さ」に対する価値評価が下がり、「(ずるくても)上手くやった方が勝ち」というような風潮が出てきていること。

楽をしながら、結果だけは得たいと。(笑)

当然、競争力は低下する一方です。


競技スポーツの最終目標は「勝つこと」しかありません。

勝つための要素は、「素質」+「環境」+「努力」。

親が子供の素質を見抜き、たとえその過程がスパルタ式であっても、結果として子供が成功すれば、勝負の世界ではそれは「正しい方法」と見なされます。

ただ、音楽やスポーツは、トップを目指すためには素質が大きく影響するので、その素質を見誤り、さんざん努力をしながら結果が出なかった場合には、相当厳しい状況に置かれます。

特に、それ「のみ」に賭けて失敗した場合は、代替選択肢が無くなります。

チュア氏の賢いところは、子供に学業と音楽の「両方」での成功を求めたところです。

たとえ音楽で身を立てられないにしても、学業(社会)で成功できれば、音楽は知識人の教養として十分に役に立ちます。


スポーツでも同じかと思います。

文武両道というのは、なかなか達成することが難しいからこそ、その価値が主張される言葉だと思います。

タイガーマザーを我々のケースに当てはめれば、「スポーツ」と「学業」を高いレベルで達成すること。

これが(オリンピックに出られないような)我々一般人(の子供)にとって一番の目標になると思います。

だけど皮肉なことに、この文武両道がことさら強調されている日本では、実は達成できる人がほとんどいなくて、逆にアメリカには多いという状況があります。

アメリカでは、スポーツ選手として成功(あるいは失敗)した後で、大学に戻り、その後ビジネスや学問で成功する人がたくさんいますので。

何歳になってもやり直すことができる社会なのですね。

日本は、スポーツ専業で失敗すると人生の方向転換が難しくなります。

だからこそ、文武両道を目指すしかない状況であるとも言えます。


そして、さらに言えば、その状況こそが日本のスポーツ界の弱さの原因の一つではないかと思います。

方向転換が出来ないリスクを考えて、多くの親は子供を「スポーツ専業」にしきれない。

かといって、中途半端に西洋式教育を受けていますから、子供の反発を抑え込み、自分自身も辛い努力を払わざるを得ない「スパルタ式文武両道」を目指すほどの覚悟もない。

建前としては両立を目指しながら、ずるずると中途半端になっているケースが、大半ではないでしょうか?

専業で頑張れないし、スパルタ式両立もできない。

結果として、欧米に勝てないばかりか、中国・韓国にも負けるという状況が生まれていると思います。

後者は、基本的にそれ一本に賭けていて、とてつもないモチベーションを持ってますから。

彼らは、失敗したらどうなるなんて考えずに、常にのし上がるつもりで戦っています。

厳しい世界だから子供にやらせたくない、というのは日本的な「親の甘え」かもしれないと感じました。

タイガーマザーにあって、我々に無いものは、「揺るぎない信念と覚悟」だと思います。

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Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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