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特集ワイド:ネット時間が思考力を奪う

特集ワイド:ネット時間が思考力を奪う

毎日新聞 2012年06月04日 東京夕刊

 インターネットや携帯電話は、人に何をもたらしたか。生活が便利にはなった。だが、あらゆる情報に簡単にアクセスできるがゆえに、「考える力の低下」という落とし穴にはまっている気がしてならない。【内野雅一、56歳】

 ◇読書時間は13分/難問も軽問も140字/センサーで育つ子供

 原稿を書こうと思い立ったのは、この一言からである。「インターネットやテレビが情報を垂れ流す中、人々の考える力が衰えている」。ベトナムで簿記普及に力を入れ、世に苦言を呈し続ける元国税庁長官で大塚ホールディングス副会長の大武健一郎さん(65)との酒席で、若者論になり飛び出した彼のぼやきだ。

 現代人、特に若い世代がいかに“ネットの海”に浸っているかは、数字に表れている。NHK放送文化研究所の国民生活時間調査(2010年)によると、「仕事以外でネットを使う時間」は20代の男性が平日1時間8分と突出しており、20代の女性も41分に達し、それぞれ前回調査(05年)より39分、25分も長くなっている。50、60代は男女とも10分程度に過ぎない。

 しかもこの時間は、スマートフォン(多機能携帯電話)時代となって一気に延びそうな気配だ。楽天リサーチの5月のアンケートでは、スマホに替えて「携帯電話の時から利用時間が2倍以上に増えた」と答えた人が4割を超えている。2倍といかないまでも、利用時間が増えたという人は実に7割以上なのだ。

 ちなみに「平日に本を読む時間」の方は、先の国民生活時間調査によると20代男性が21分、女性が18分。全世代平均では、前回調査と同じたった13分だ。

 人の営みは、1日24時間の消費活動である。生きていくために欠かせない食事とか睡眠の一方で、自由な時間をどう使うか。それが自分を磨くこと、生活を豊かにすることにつながる。その一つが、新聞や本などの活字を読むことだ。活字が完全にネットに取って代わられるかどうかは別にして、一日を侵食しつつある「ネット時間」が人々の思考や行動に影響を与えてもおかしくはない。

 「本の虫」として知られる編集工学研究所所長の松岡正剛さん(68)は、ネットの問題を次のように指摘する。

 「世の中の情報化の流れは難問も軽問も、深い現象も浅い現象も、同じようにメニュー化された情報、言わばエクセルの表に落とし込むように奥行きや大小のないものとして整理していった。1万人が亡くなる事件も、1人のおばあさんが孤独死することも情報として同じ扱いになってしまった。この傾向は、機器そのもののスモールサイズ化によって加速され、ついには140字というツイッターの文字数になってしまった……」

身近な例を考えても、携帯電話が普及し始めた頃「電話番号を覚えられなくなった」との声をよく耳にした。記憶力の低下だろう。携帯電話だけではない。地図を画面に示してくれるカーナビゲーションがほとんどの車に付くようになり、頭の中から地図が消えてしまったように感じるのは僕だけではないだろう。

 情報の洪水の中に生きながら、人々は事の軽重が分からなくなり、思考力が摩滅し衰退しているというのだ。

 著書で「品格」を説いたお茶の水女子大学名誉教授の藤原正彦さん(68)は「若い人だけでなく、70代くらいまで本を読まなくなり、ものを考えずに生きている」と手厳しい。

 「文学、芸術、思想、歴史などの教養は、確かに腹の足しにはならない。しかし、人は活字を通じてそれらに触れることで時空を超え物事の本質を見抜く大局観や人間観、長期的な視野を身に着けてきた。インターネットでは情報を“身に着ける”だけ。時空を超えるという点でも、活字ほどの深さがない。つまり、教養というものはインターネットでは身に着かないということだ」

 平たく言えば「教養」とは人が生きるすべだろう。人生でぶつかるさまざまな問題を解決する手立てと言える。だが現代人は、その生きるすべさえ、すべてネットから引き出せるという感覚、いや錯覚に陥っている。教養がなくても生活に困らないのだ

ただ、「文字を読む」という行為に限定していえば、電子書籍の普及という現実がある。活字の本と何が違うのだろうか。松岡さんが解説する。

 「活字の本は表紙があって目次、本文、あとがき、奥付がある。このパッケージ力が活字の世界の奥行き感を生んでいる。紙の新聞に政治面や社会面などの面があり、大中小の見出しがあることで濃淡をつけているのと同じです。けれども電子書籍は、こうしたパッケージ性を平面化してしまう。衣食に例えると、普段着、ファストフードだけで済ませてしまうこと。思索力を身に着けるという点では逆方向に進んでしまっている」

 大武さんも「新聞は見出しによって読んだり読まなかったりする。つまり、読むという意識が強いから、書いてあることが頭にとどまる。理解しにくい箇所は繰り返し読む。それが『考える』ことにつながる」と話す。

 ネット「以前」の環境、すなわち「子育て」を問題視する意見もある。

 育児のあらゆる面で便利となり、「家畜化」する子供を取材し続けているノンフィクション作家の石川結貴さん(50)は、「考える力とか、人に伝える力というものが早い段階で奪われている」と警告する。

 例えば--。幼稚園で手洗い場の蛇口を前に、園児が水が出ないと立ったままでいる。「先生が蛇口のひねり方を教えようとすると、母親がセンサー式にならないかと言ってくる。で、改築しちゃう」。園児の様子をカメラで撮影し、職場の母親がネットを通じリアルタイムで確認できるという保育園もある。「ここまでやると、帰ってから保育園で何があったのとか、ケンカしなかった?といった子供との会話が成り立たない。“実況中継”で見ているのだから。そのため、どうやって友達と仲直りするかを一緒に考えるなどの機会が失われている。そもそもケンカしたら、もうあの子と遊ばなくていいと切り捨ててしまう時代だから」

 「深く考えない」現象は、今の政治にも広がっている。国民の意見に対症療法的に応える政治しかできなくなっていることが、その証左だ。大衆迎合の極みである。国民の心の奥底、本当に望んでいることは何かを洞察することが大事なのに、世論調査に一喜一憂する。その点ではメディアも同罪だ。

 原稿執筆を思い立ったはいいが、だんだん不安になってきた。“便利尽くし”の環境で育った子供たちがスマホを駆使する。もう僕らは、そんな時代に足を踏み入れている。不安どころではない。この国の行く末にあるのは絶望だけなのか。

 「人間は考える葦(あし)である」--パスカルが泣いている。


多分に情緒的・感覚的な文章ですが、言いたいことはわかります。

次から次に押し寄せる情報の洪水の中で、瞬時に判断し、行動することが求められているため、腰を落ち着けてじっくりと物事に取り組む余裕がなくなっているのだと思います。

考える機会がなければ、思考力は衰えるのは当然かと思います。

それでも生活は成り立ってしまうため、考えることの必要性、重要性さえも、忘れさられてきている、ということでしょうか。

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プロフィール

ジュニアスキー

Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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