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アメリカのギフテッド教育事情

アメリカのギフテッド教育事情

ポーター倫子(ワシントン州立大学人間発達学科専任教員)
2011年11月 2日掲載

要旨:
ギフテッド教育(Gifted Education)とは、平均よりも顕著に高い能力を持っている人のための教育である。英才教育の一種であるが、先取り学習により他の人よりも高い学力を身につけようとする早期教育とは異なる。ギフテッドの子どもたちの高知能、高能力に伴う様々な精神・社会面での問題ゆえに、通常のクラスでは学業の成績が伸びなかったり、登校拒否なども見られることから、アメリカにおいては、障害児教育と並ぶ特別支援の教育施策として捉えられている。今回は、筆者の娘がギフテッド教育に参加したその実例を含めながら、州ごとに異なるその取り組みを紹介し、また現場でギフテッド教育を担当している教員に話を伺った内容も含めて報告する。最後に、日本の教育界がアメリカのギフテッド教育より何を学ぶことができるかについて提言してみたい。


1.ギフテッドとは

ギフテッドの定義は多様であり、その捉え方によって対象とする子ども、その教育方法も異なっている。ギフテッド (gifted) *1という言葉からは、天から与えられた資質、つまり生まれつきの特質と捉えていることが伺われる。しかし遺伝によるものなのか、環境によるものなのかは長らく論争が続けられており、最近では、遺伝と環境の相互作用という見方が主流のようである。

ギフテッドの生徒とは、現在の連邦政府の定義では「知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、または特定の学問分野で高い達成能力を持つため、その能力をフルに開発させるために通常の学校教育以上のサービスや活動を必要とする子どもたち」である。ハワード・ガードナーによると、このような特別な能力は、言語、論理、数学のみならず、音楽、身体運動、対人性など幅広い分野に渡って定義づけられる(多元的知能理論)。しかし、実際のギフテッド教育プログラムの選抜に際しては、IQ(知能指数)や学力テストが主な測定手段として用いられているようである。国としての正式な統計はないが、ギフテッド教育の最も大きな全米組織、National Association for Gifted Children (NAGC・全米ギフテッド教育協会)によると、米国の中では学齢の子どもたちの約6%、約300万人がその対象である。

先にも述べたが、ギフテッドとは教育熱心な親によって、幼少より特別な早期教育を施したり、親や本人の努力で優れた成績を収める優秀な生徒とは一線を画すると言われている。たとえば、筆者が参加した学区主催のギフテッドプログラムのオリエンテーションでは、ギフテッド学習者(gifted learner)の特徴として、優秀な子ども(bright child)と対照させながら、以下のような説明を受けた。

キャプチャ - コピー

上の表より、好奇心・独創性に富み、優れた記憶力を持ち、わずかの反復で課題を修得することができ、一生懸命学習しなくても際立った学習成績を修めるというギフテッドの特徴が伺われる。また完璧主義に陥りやすく、自己を厳しく評価する傾向のあることが指摘されている。精神面や社会面と比べ、認知能力や語彙が周りの子どもたちよりもはるかに発達していることから、同年齢の子どもたちに溶け込めず、大人と過ごす方を好むようである。しかしこれらの特徴には、個人差がみられることに留意したい。

(中略)

5.日本の教育への提言

最後に、日本の教育はアメリカのギフテッド教育により何を学ぶことができるかを論じてみたい。生まれつきの能力差が存在しないという教育観が強い日本の場合、ギフテッドの概念自体が受け入れにくく、むしろ早期教育として波及することに懸念を持つ教育関係者もいることであろう。しかし、アメリカの報告で指摘されているように、その高い能力ゆえに授業の内容が簡単すぎる、興味がわかない、周りとうまく合わせることができないという理由で反社会的な行動をとっている子どもたちがいる可能性は、今後日本の中でも検討されなければならないと思う。特に、ADHDなどの障害が疑われる子どもたちの診断の際、ギフテッドである可能性を含めた上での総合的な判断が必要になってくるであろう。アメリカの事例で見られるように、ギフテッドであるがゆえに子どもたちが落ちこぼれていくケースを軽視してはならないと考える。

話は変わるが、昨年末より中国系アメリカ人でイェール大学法学部の教授であるAmy Chua氏の書いた本、『Battle Hymn of the Tiger Mother』(タイガー・マザー)という自伝がアメリカで大変な論議を呼んでいる。数多くの天才児、クラシック音楽の神童を生み出す中国流子育て法を、アメリカ式のやり方と対比させながらこと細かく説明している。その猛烈なスパルタ式の家庭教育について、一部の読者からは児童虐待だと激しく非難を浴びている反面、そのような教育を受けているアジア系の子どもたちにアメリカ人は負けてしまうのではというあせりも広がっているようである。ここで浮き彫りにされている教育観は、人一倍努力すればどの子どもも人並み外れた能力を発揮するという教育における環境を重視した考え方である。しかし本人の意思や興味、能力を考慮せずに、血のにじむような努力でギフテッドとして成長するのかという疑問も残り、またその弊害も危惧されるところである。

中国に比べ、早い時期から戦後急成長を遂げた日本の教育が「教育ママ」「受験地獄」などの用語と共に世界で注目されたことを忘れてはならない。その後、詰め込み主義的な教育観の反省から、日本ではゆとりの教育が奨励されたが、現在では基礎学力の低下を危ぶむ声が高まり「脱ゆとり」教育が推進されている。教育観が変遷していく中、「学力」「知」をどのように定義づけていくかが問われるところである。特に、一人ひとりの子どもを大切にした教育を目指すならば、本人に潜む能力や学力レベルの違いをどのように捉え、実践に生かしていくのだろうか。今後の研究が期待されるところである。

(以下略)


表は、いわゆる「秀才」と「天才」の違いを良く表しています。

決してギフテッドでない私の経験からも、世の中には「一を聞いて十を知る」人間が存在することは良くわかっています。

彼らは、ずば抜けた理解力のみならず、知的好奇心もきわめて強く、授業に出なくても、自分自身で効率的に勉強ができます。(東大、京大の上位レベル)

常に興味と疑問を持っていて、学習することで新しい知識が得られたり、疑問が解消されることが、楽しくて堪らないようです。(強制されているという感覚はほとんどないと思います)

高校の時のある同級生は(頭の良さだけでなく)並外れた記憶力を持っていて、授業中に先生が話したことを(数ヶ月後の)試験前でもすべて記憶していました。

試しに30年後に確認したところ、驚くべき事に、高校の授業の記憶は(先生の説明だけでなく、どこでどんな冗談を言ったかまでも)ほとんどそのまま保持されているようでした。(朝日新聞にノーベル賞候補者として載ったこともある人です)


フィギュアスケートの「宇宙人たち」は、スポーツにおけるギフテッドの例なのだと思います。

ただ、多くの選手の生い立ちを見る限り、どのスポーツ分野であったとしても、持って生まれた「才能」は、途方もない「努力(環境要因)」の積み重ねを発現条件として、はじめて結果に結びつくようです。

このため、成功したギフテッド選手はほんの一握りだということも、また確かだと思います。(いわゆる何年かに一人の天才。スキーでは、猪谷さん、海和さん、木村さんとか・・)

たぶんタレントはありながらも、見い出されなかったり、種々の原因で環境を維持できなかったり、本人の意向と合致しなかったり、等の理由で成功しなかった選手も多かったものと推測します。

アメリカの場合もそうですが、ギフテッドは才能がありながら、一方で不適応を起こしやすい傾向を持っていることから、一般の子供とは別の形で教育するケースが多いようです。

スキーに当てはめれば、制度として「中高一貫校」にスキーコースを設けるのが一番でしょうね。

そこに全国から優れた選手を集めて、特別教育を行う。

それ以前の小学校時代は、スポーツ少年団などの地域チームで、ひたすら「基本練習」を行う。

技術論も大切ですが、制度でしか解決できない問題もあると思います。


また、結果に対して、才能が大きな比重を占めるスポーツ分野もあれば、環境の方が大きな分野もあると思います。


天才の多くは、「常識」が足かせとなるような創造的な分野で活躍しますが、通常の社会人にとって、そのような才能を発揮できる分野は限られると思われます。

才能は大して無くても、きちんとした仕事を続けることで周囲からも評価され、一人前の社会生活を送れるようになるのだと思います。


たぶんスキーにおけるジュニア育成のあり方も同じなのだと思います。

天才は天才として、努力型は努力型として、各人がスキーによって自己実現が可能になるような(居場所がちゃんとあり、充実感・満足感が持てる)仕組みを作るのが一番良いだろうと考えています。


*本文の「タイガー・マザー」については、こちらをご参照。

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プロフィール

ジュニアスキー

Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
上欄のカテゴリから興味のある話題をお選び下さい。
(2009年7月25日開設)


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