【ビジネスのツボ】プリンスホテルの子供スキー教室
【ビジネスのツボ】プリンスホテルの子供スキー教室
2012.2.27 05:00 サンケイ・ビズ

パンダルマンキッズスクールでスキーを学ぶ子供の様子。枠をくぐったり、つるしてあるボールにタッチしたりすることで、スキーの動作を学ばせる(プリンスホテル提供)
■「遊びながら上達」ファミリー層つかむ
スキー人口の減少傾向が続く中、歯止めをかけようと、スキー場を運営するプリンスホテルが子供向けのユニークなスキー教室を開催している。最大の特徴は、スキー場であるにもかかわらず、雪のない屋内ゲレンデも設けてある点だ。いきなり雪上に立たせて、スキー嫌いになる子供が少なくないことに着目、「楽しくスキーを覚えてもらう」のがコンセプトだ。かつてスキーブームを担った世代が子供を連れてスキー場に戻ってきてもらうのが狙いで、苗場スキー場(新潟県湯沢町)に続き、今シーズンからは軽井沢スキー場(長野県軽井沢町)でも始め、集客に一役買っている。
◆ブーム再燃への突破口
「三角だよ。スキー板で三角を作って」。屋内ゲレンデでボーゲンを指導する声が響く。
昨シーズンから始まった苗場スキー場の子供向けスキー教室「パンダルマンキッズスクール」。屋内と屋外両方のゲレンデを使ったスキーレッスンは業界でも珍しい取り組みだ。
景気低迷や所得不安、レジャーの多様化などから、スキー人口は減少傾向をたどっている。日本生産性本部のレジャー白書によると、1993年に1860万人いたスキーの参加人口は、2010年には570万人と3分の1以下に激減した。
低迷が続くスキー人口のてこ入れに向けて、全国のスキー場で試みられているのがファミリー層の取り込みだ。若者だけでなく、かつて1980~90年代のスキーブームを担った世代に子供を連れてスキー場に戻ってきてもらい、スキーの楽しさを親子で味わってもらう。その突破口として期待されているのが、子供向けスキー教室。将来のスキー人口増加にもつなげる思惑もある。
全国に9つのスキー場を持つプリンスホテルもスキー教室の活性化を模索していた。「ファミリー層に訴える差別化戦略はないか」。関係者は頭を寄せ合った。
そのときにアンテナにかかったのが、スキー場の設計やスキースクールの運営を手がけるアプレスキー(名古屋市天白区)の提案だった。同社は、夏季にスキーを練習するための滑りを良くした特殊なマットを開発しているが、子供が遊んでも安全なマットを考案し、雪を使わない子供向け室内ゲレンデの構想を持っていた。「初めてスキーをする子供にとって、重い装備や雪の上での動きづらさはかなりのストレス。まずは室内で装備に慣れさせることができる」(アプレスキーの白川直樹代表取締役)。
ちょうどそのとき、プリンスホテルでは苗場スキー場の屋内プールが老朽化して維持や修繕が難しくなり、再利用問題が浮上していた。
さらに苗場スキー場は、広いエリアと豊富なコースで初心者から上級者までが楽しめるスキー場だが、「全方位的で、正直にいうとどれをとってもいまひとつだった」(苗場プリンスホテル支配人の村井宏通さん)。
「屋内プールをゲレンデに改造し、苗場の新しい売り物にしよう」。さっそくプールの改造工事に着手。パンダルマンキッズスクールはスキーシーズン真っ盛りの10年12月にオープンした。
大事にしたのは、子供たちが「途中でめげない」プログラム作りだ。「パンダルマン」というパンダと雪だるまを掛け合わせたキャラクターを登場させ、スキー靴をはかせてパンダルマンと一緒に運動をさせる。子供にとってはかわいいキャラクターと遊んでいるだけで、靴の重さに慣れることができる。斜面を歩かせるゲームでは身体の重心を前に置くスキーの基本姿勢やスキーで左右に曲がる動作を自然に身に付けさせる。
次にスキー板を履き、狭い場所を歩かせることで板の長さに慣れさせ、この後に人工芝の上を滑らせる。雪上なら時速20キロほどのスピードが出る斜度だが、ここでは3~5キロほどしか出ない。子供に斜面への恐怖感を与えない工夫だ。ここまでやってやっと屋外のプログラムに移る。
◆子供宿泊17%超の増加
パンダルマンキッズスクール(3~9歳)の料金は2時間7000円からと他の子供向け教室より割高だが、「楽しく滑れるようになる」「子供が雪を好きになる」と口コミでじわじわと評判を呼んでいるという。教室の人気もあって苗場プリンスホテルでは、10年度の年末年始の子供の宿泊は前年比8%増、スクール2シーズン目の11年度は17%を超える増加となった。子供連れが増えたことも影響し、宿泊料が比較的高めなファミリールームの稼働率が上がり、ホテル全体の単価が上昇する効果も出ている。
苗場の室内ゲレンデでは、家族が普段着のままで子供の様子を見学できる利点もある。「孫を見たいために宿泊するおじいちゃん、おばあちゃんが増え、3世代での利用が今年は特に増えた」(村井さん)。白川さんによると、50人の受講者に対してギャラリーが約3倍の150人に膨らむこともあるという。
村井さんは「ファミリー向け施策は軌道に乗った」と自信を見せる一方で、「今回親子連れが来てくれているのは、親世代が青春時代に苗場でスキーを楽しんでいた下地があったから」と分析する。「こういう層を作るには、やはり若者にも力を入れなければならない」と語る。苗場で初めてスキーに触れ、青春時代を楽しみ、親になったら子供を連れてくる-。そんな「お客さまのライフサイクルを作っていきたい」と村井さんはビジョンを語った。
こういう施設ならば、スキー場でなくても都市部にも作れそうです。
また、プラスノーに併設できれば、(現在スキー・ホリックが大部分を占める)サマーゲレンデの客層も広がりそうです。
そのうちに、(雪上)初滑りで「上級者」が出現するかも??
2012.2.27 05:00 サンケイ・ビズ

パンダルマンキッズスクールでスキーを学ぶ子供の様子。枠をくぐったり、つるしてあるボールにタッチしたりすることで、スキーの動作を学ばせる(プリンスホテル提供)
■「遊びながら上達」ファミリー層つかむ
スキー人口の減少傾向が続く中、歯止めをかけようと、スキー場を運営するプリンスホテルが子供向けのユニークなスキー教室を開催している。最大の特徴は、スキー場であるにもかかわらず、雪のない屋内ゲレンデも設けてある点だ。いきなり雪上に立たせて、スキー嫌いになる子供が少なくないことに着目、「楽しくスキーを覚えてもらう」のがコンセプトだ。かつてスキーブームを担った世代が子供を連れてスキー場に戻ってきてもらうのが狙いで、苗場スキー場(新潟県湯沢町)に続き、今シーズンからは軽井沢スキー場(長野県軽井沢町)でも始め、集客に一役買っている。
◆ブーム再燃への突破口
「三角だよ。スキー板で三角を作って」。屋内ゲレンデでボーゲンを指導する声が響く。
昨シーズンから始まった苗場スキー場の子供向けスキー教室「パンダルマンキッズスクール」。屋内と屋外両方のゲレンデを使ったスキーレッスンは業界でも珍しい取り組みだ。
景気低迷や所得不安、レジャーの多様化などから、スキー人口は減少傾向をたどっている。日本生産性本部のレジャー白書によると、1993年に1860万人いたスキーの参加人口は、2010年には570万人と3分の1以下に激減した。
低迷が続くスキー人口のてこ入れに向けて、全国のスキー場で試みられているのがファミリー層の取り込みだ。若者だけでなく、かつて1980~90年代のスキーブームを担った世代に子供を連れてスキー場に戻ってきてもらい、スキーの楽しさを親子で味わってもらう。その突破口として期待されているのが、子供向けスキー教室。将来のスキー人口増加にもつなげる思惑もある。
全国に9つのスキー場を持つプリンスホテルもスキー教室の活性化を模索していた。「ファミリー層に訴える差別化戦略はないか」。関係者は頭を寄せ合った。
そのときにアンテナにかかったのが、スキー場の設計やスキースクールの運営を手がけるアプレスキー(名古屋市天白区)の提案だった。同社は、夏季にスキーを練習するための滑りを良くした特殊なマットを開発しているが、子供が遊んでも安全なマットを考案し、雪を使わない子供向け室内ゲレンデの構想を持っていた。「初めてスキーをする子供にとって、重い装備や雪の上での動きづらさはかなりのストレス。まずは室内で装備に慣れさせることができる」(アプレスキーの白川直樹代表取締役)。
ちょうどそのとき、プリンスホテルでは苗場スキー場の屋内プールが老朽化して維持や修繕が難しくなり、再利用問題が浮上していた。
さらに苗場スキー場は、広いエリアと豊富なコースで初心者から上級者までが楽しめるスキー場だが、「全方位的で、正直にいうとどれをとってもいまひとつだった」(苗場プリンスホテル支配人の村井宏通さん)。
「屋内プールをゲレンデに改造し、苗場の新しい売り物にしよう」。さっそくプールの改造工事に着手。パンダルマンキッズスクールはスキーシーズン真っ盛りの10年12月にオープンした。
大事にしたのは、子供たちが「途中でめげない」プログラム作りだ。「パンダルマン」というパンダと雪だるまを掛け合わせたキャラクターを登場させ、スキー靴をはかせてパンダルマンと一緒に運動をさせる。子供にとってはかわいいキャラクターと遊んでいるだけで、靴の重さに慣れることができる。斜面を歩かせるゲームでは身体の重心を前に置くスキーの基本姿勢やスキーで左右に曲がる動作を自然に身に付けさせる。
次にスキー板を履き、狭い場所を歩かせることで板の長さに慣れさせ、この後に人工芝の上を滑らせる。雪上なら時速20キロほどのスピードが出る斜度だが、ここでは3~5キロほどしか出ない。子供に斜面への恐怖感を与えない工夫だ。ここまでやってやっと屋外のプログラムに移る。
◆子供宿泊17%超の増加
パンダルマンキッズスクール(3~9歳)の料金は2時間7000円からと他の子供向け教室より割高だが、「楽しく滑れるようになる」「子供が雪を好きになる」と口コミでじわじわと評判を呼んでいるという。教室の人気もあって苗場プリンスホテルでは、10年度の年末年始の子供の宿泊は前年比8%増、スクール2シーズン目の11年度は17%を超える増加となった。子供連れが増えたことも影響し、宿泊料が比較的高めなファミリールームの稼働率が上がり、ホテル全体の単価が上昇する効果も出ている。
苗場の室内ゲレンデでは、家族が普段着のままで子供の様子を見学できる利点もある。「孫を見たいために宿泊するおじいちゃん、おばあちゃんが増え、3世代での利用が今年は特に増えた」(村井さん)。白川さんによると、50人の受講者に対してギャラリーが約3倍の150人に膨らむこともあるという。
村井さんは「ファミリー向け施策は軌道に乗った」と自信を見せる一方で、「今回親子連れが来てくれているのは、親世代が青春時代に苗場でスキーを楽しんでいた下地があったから」と分析する。「こういう層を作るには、やはり若者にも力を入れなければならない」と語る。苗場で初めてスキーに触れ、青春時代を楽しみ、親になったら子供を連れてくる-。そんな「お客さまのライフサイクルを作っていきたい」と村井さんはビジョンを語った。
こういう施設ならば、スキー場でなくても都市部にも作れそうです。
また、プラスノーに併設できれば、(現在スキー・ホリックが大部分を占める)サマーゲレンデの客層も広がりそうです。
そのうちに、(雪上)初滑りで「上級者」が出現するかも??
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