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ある「カリスマ」の死

ある「カリスマ」の死

2011.11.26 03:06 産経新聞

 ◆異様なエネルギー

 「カリスマ」という宗教用語に、現代的な意味を付与したのはドイツの社会学者、M・ウェーバーである。カリスマは「支配-被支配」の関係を構築し、その関係を絶対化させる権力を持つことが最小限の条件として求められる。

 さらに、この関係から容易に抜け出すことができないような「磁力」、もっと言えば「魔力」を持たなければならない。

 カリスマは宗教だけでなく、政治や事業、スポーツなど各分野にまたがって存在する。日本においては、最近に限れば、オウム真理教の教祖が思いうかぶが、その他の分野ではせいぜい「小カリスマ」程度しか見あたらない。

 56歳という若さで、この10月に亡くなった米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは、「大」がつく「カリスマ」であろう。関連の書物が、書籍店のビジネスコーナーなどに山積し、ベストセラーになっているという。だが筆者は、ビジネス書にはまったく興味がないので、これまで一冊も買ったことはない。

 ジョブズ自らが公認し、取材にも協力したジャーナリスト、ウォルター・アイザックソン著の評伝『スティーブ・ジョブズ』を買ったのは、2つの理由からだ。

 ひとつは今年春、イッセイミヤケがデザインした、おなじみの黒いハイネックが、ブカブカになるほどに痛々しくやせ細ったジョブズの「iPad2」の発表会をニュース番組で見たからだ。聴衆をわかすジョブズの気迫の底からは、死の匂いがただよっていた。

 もうひとつは、このニュースを見て、なにげなく「iPad2」を買って「しまった」からである。いまだに「しまった」のままで、満足に使いこなすこともできず、もっぱら書物を「自炊」するためにだけ使っている。

 上下巻900ページの評伝を読むのは、苦痛をともなった。Macにはじまり、iPod、iPhoneなどのIT機器についてはまったく無知だからだ。興味があったのはジョブズの生い立ちと、さまざまな困難や問題に立ち向かっていくときの異様ともいえるエネルギーである。

 ◆平気で「共食い」

 ジョブズは、ときに精神医学の対象としても扱われている。同書に出てくるのは、「双極性障害」「共感欠損症候群」「自己愛性人格障害」の3点である。双極性障害は躁(そう)状態と鬱状態を繰りかえし起こすか、またはそれらを「混合」して起こす症状を指す。残りの2つは字義通りである。

 ジョブズの特性だとされる「現実歪曲(わいきょく)フィールド」という、意味の受け取りにくいコトバも頻出するが、現実と願望をクロスさせてしまう「妄想」とも受け取れる。

 これらがマイナス面に作用すると、どなる、わめく、おだてる、事実をねじ曲げる、冷酷、辛辣(しんらつ)-と、非情極まりないふるまいにおよぶ。開発のプロセスは「ちゃぶ台返し」の連続で、多くの部下が会社を去り、クビを切られた。

 プラスの方に転換させると、たとえばポータブル音楽プレーヤー、iPodを開発、発売するさいに、レコード会社や音楽家らに対して、じつに巧妙な交渉術を駆使し、ついには成功させてしまう

 この分野では、ソニーの「ウォークマン」が先行し、ハードウエアやソフトウエア、機器、コンテンツなど、iPodに対抗するのに必要なものをすべて持っていた。だが、あっさりとやられてしまった、と指摘する。

 アイザックソンは、ソニーが「部門ごとの独立採算性を採用していた点」が致命的だった、と指摘する。要するに「共食い」を恐れたのである。

 だがアップルは、ジョブズがすべての部門をコントロールし、「自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけだからね」と、平気で共食いをした。

 ◆「直感」と「汗」

 ウェーバーはすでに1世紀近くまえ、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で、アメリカ合衆国の資本主義にたいし、危惧の念を抱き、こう書いた。

 「営利活動は宗教的・倫理的な意味を取り去られていて、今では純粋な競争の感情に結びつく傾向があり、その結果、スポーツの性格をおびることさえ稀(まれ)ではない

 アイザックソンは、発明王エジソン、自動車王フォードとならび、ジョブズを「100年あとまで記憶に残る経営者」と高く評価するが、これは疑問である。エジソンは「天才とは1%のインスピレーション(直感)と99%のパースピレーション(汗)だ」という有名なコトバを残した。

 ジョブズは確かに「天才」であった。だが流した99%の汗は「スポーツ」の後にかいた汗のように思えてならない。(ふくしま としお)



(参考)自己愛性人格障害の臨床像(Wiki)

内的には不安定であるにもかかわらず、誇大的な自己像や積極的な自己顕示により、「頭がいい」「仕事ができる」「表現力がある」といった長所を持つと思われることが多い。そのため、彼らが不適応行動を起こしたとき、周囲の人は意外な感じを持つことが稀ではない。

・自分について素晴らしい理想的な自己像(誇大的自己)を抱き、自分は他人より優れた能力を持っているとか、自分は特別だと思い込んでいる。うぬぼれが強い

・その背後で、常に深刻な不安定感や頼りなさを経験し、本質的には他者依存的である。自尊心を維持するために、絶えず周囲からの称賛・好意・特別扱いを得ようとする(アルコール依存症患者が酒を求めるように)。あるいは、自分が理想とするような権力や能力のある人に頼り、まるで自分がその人であるかのように考えたり振る舞ったりする。

・自己肯定感や自尊心が高まっているという感覚を、一定の期間維持することができる。この感覚が自分を支配しているとき、自分が傷ついたという、弱い一面を持っていることにほとんど気付かない。しかし、誇大的な自己像が傷つけられるような体験をすると、一転して自分はだめだ、価値がない、無能だと感じる。自分についてもある一つの体験についても、よい面もあれば悪い面もあるといったとらえ方ができない。

自分に向けられた非難や批判に対し、怒りや憎しみを持つか、屈辱感や落胆を経験する。これらの感情は必ずしも表面にあらわれず、内心そのように感じているということがしばしば。自分に言い聞かせて自分を慰めることができない。誰か他の人に慰め、認めてもらわないと、自分を維持できない。否定をされるとそれを受け入れられずに現実逃避し、嘘や詭弁で逃げようとする。そのため失敗について本当に反省したり、そのときのつらさや痛みを認識する能力に欠けている。失敗(あるいは批判)から新しく何かを学ぶことができない。

・次から次へと際限なく成功・権力・名声・富・美を追い求めており、誇大的な自己像を現実化しようと絶えず努力している。しかし上記のような考え方の偏りにより、その過酷な努力を社会的成功に結び付けられないことがある。能力がない自己愛者は、より退行した形で他者からの是認を求めようとする

・誇大的な自己像を思い描き、その空想的な思い込みの世界に浸っている。他者と関係を持つにしても、それは自分の自尊心を支えるために人を利用している傾向がある。本当の意味で他者に共感したり、思いやりを持ったり、感謝したりすることができない場合が多い。(もっとも言語的表現力がしばしばあるので、うわべだけの思いやりを示すことに長けている)。表面的な適応はさておき、他者との現実的な信頼関係を持つことができない。

・自己愛性人格障害の人は、良心に乏しく利己的な人間である[1]。



類似した概念に境界性人格障害(いわゆるボーダー)があります。

境界性人格障害(きょうかいせいじんかくしょうがい、Borderline Personality Disorder,BPD)は、境界型人格障害とも呼ばれ、思春期または成人期に多く生じる人格障害である。不安定な自己-他者のイメージ、感情・思考の制御の障害、衝動的な自己破壊行為などの特徴がある。(Wiki)

ジョブズが偏執的な性格なのは知っていましたが、精神病を疑われていたとは・・。

アップル信者にも類似したものを感じるところがあります。(最近のブームに乗って使い始めた人は「普通」です)

「きわめて有能な人格障害者」の下で働いていた人にとっては、毎日が恐怖だったでしょうね。

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Author:ジュニアスキー
子供が小1の冬に家族でスキーを始め、すっかりその魅力にはまっております。小4から地元のスポーツ少年団に所属し、競技スキーを始めています。(現在中3)
ジュニアアルペン競技の情報ブログとしてスタートし、最近ではスキー全般、その他に関する話題も扱っています。
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(2009年7月25日開設)


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