グッドコーチに向けた「7つの提言」
グッドコーチに向けた「7つの提言」

新しい時代にふさわしいコーチングの確立に向けて~グッドコーチに向けた「7つの提言」~
「コーチング推進コンソーシアム」(以下、「コンソーシアム」という。)は、「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議(タスクフォース)報告書」(平成25年7月)に基づき、オールジャパン体制でコーチング環境の改善・充実に向けた取組を推進するため、我が国を代表するスポーツ関係団体や大学、クラブ、アスリートなどを構成員として設置(平成26年6月)されたものです。
我が国においては、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を契機として、世界に誇れる我が国のコーチングを確立するとともに、2020年以降も有形無形のレガシーとして、持続可能なスポーツ立国の実現に向けた取組が一層求められています。
そこで、コンソーシアムでは、全ての人々が自発性の下、年齢、性別、障害の有無に関わらず、それぞれの関心・適性等に応じてスポーツを実践する多様な現場でのコーチングを正しい方向へと導くため、「グッドコーチに向けた『7つの提言』」を取りまとめました。
さらには、グローバル化が進展する現代において、国内はもとより、諸外国で活躍するコーチなど、国際社会の中でコーチングに関わる全ての人々にも参考としていただくことを期待しています。
今後、コンソーシアムの構成団体を通じて、7つの提言を広く関係者に呼びかけ、コーチング環境の改善・充実を図っていくこととしています。
平成27年3月13日
コーチング推進コンソーシアム
グッドコーチに向けた「7つの提言」
スポーツに関わる全ての人々が、「7つの提言」を参考にし、新しい時代にふさわしい、正しいコーチングを実現することを期待します。
1.暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くしましょう。
暴力やハラスメントを行使するコーチングからは、グッドプレーヤーは決して生まれないことを深く自覚するとともに、コーチング技術やスポーツ医・科学に立脚したスポーツ指導を実践することを決意し、スポーツの現場における暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くすことが必要です。
2.自らの「人間力」を高めましょう。
コーチングが社会的活動であることを常に自覚し、自己をコントロールしながらプレーヤーの成長をサポートするため、グッドコーチに求められるリーダーシップ、コミュニケーションスキル、論理的思考力、規範意識、忍耐力、克己心等の「人間力」を高めることが必要です。
3.常に学び続けましょう。
自らの経験だけに基づいたコーチングから脱却し、国内外のスポーツを取り巻く環境に対応した効果的なコーチングを実践するため、最新の指導内容や指導法の習得に努め、競技横断的な知識・技能や、例えば、国際コーチング・エクセレンス評議会(ICCE)等におけるコーチングの国際的な情報を収集し、常に学び続けることが必要です。
4.プレーヤーのことを最優先に考えましょう。
プレーヤーの人格及びニーズや資質を尊重し、相互の信頼関係を築き、常に効果的なコミュニケーションにより、スポーツの価値や目的、トレーニング効果等についての共通認識の下、公平なコーチングを行うことが必要です。
5.自立したプレーヤーを育てましょう。
スポーツは、プレーヤーが年齢、性別、障害の有無に関わらず、その適性及び健康状態に応じて、安全に自主的かつ自律的に実践するものであることを自覚し、自ら考え、自ら工夫する、自立したプレーヤーとして育成することが必要です。
6.社会に開かれたコーチングに努めましょう。
コーチング環境を改善・充実するため、プレーヤーを取り巻くコーチ、家族、マネジャー、トレーナー、医師、教員等の様々な関係者(アントラージュ)と課題を共有し、社会に開かれたコーチングを行うことが必要です。
7.コーチの社会的信頼を高めましょう。
新しい時代にふさわしい、正しいコーチングを実践することを通して、スポーツそのものの価値やインテグリティ(高潔性)を高めるとともに、スポーツを通じて社会に貢献する人材を継続して育成・輩出することにより、コーチの社会的な信頼を高めることが必要です。
お問合せ先
文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ振興課
電話番号:03-5253-4111(内線2686)
ファクシミリ番号:03-6734-3792

新しい時代にふさわしいコーチングの確立に向けて~グッドコーチに向けた「7つの提言」~
「コーチング推進コンソーシアム」(以下、「コンソーシアム」という。)は、「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議(タスクフォース)報告書」(平成25年7月)に基づき、オールジャパン体制でコーチング環境の改善・充実に向けた取組を推進するため、我が国を代表するスポーツ関係団体や大学、クラブ、アスリートなどを構成員として設置(平成26年6月)されたものです。
我が国においては、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を契機として、世界に誇れる我が国のコーチングを確立するとともに、2020年以降も有形無形のレガシーとして、持続可能なスポーツ立国の実現に向けた取組が一層求められています。
そこで、コンソーシアムでは、全ての人々が自発性の下、年齢、性別、障害の有無に関わらず、それぞれの関心・適性等に応じてスポーツを実践する多様な現場でのコーチングを正しい方向へと導くため、「グッドコーチに向けた『7つの提言』」を取りまとめました。
さらには、グローバル化が進展する現代において、国内はもとより、諸外国で活躍するコーチなど、国際社会の中でコーチングに関わる全ての人々にも参考としていただくことを期待しています。
今後、コンソーシアムの構成団体を通じて、7つの提言を広く関係者に呼びかけ、コーチング環境の改善・充実を図っていくこととしています。
平成27年3月13日
コーチング推進コンソーシアム
グッドコーチに向けた「7つの提言」
スポーツに関わる全ての人々が、「7つの提言」を参考にし、新しい時代にふさわしい、正しいコーチングを実現することを期待します。
1.暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くしましょう。
暴力やハラスメントを行使するコーチングからは、グッドプレーヤーは決して生まれないことを深く自覚するとともに、コーチング技術やスポーツ医・科学に立脚したスポーツ指導を実践することを決意し、スポーツの現場における暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くすことが必要です。
2.自らの「人間力」を高めましょう。
コーチングが社会的活動であることを常に自覚し、自己をコントロールしながらプレーヤーの成長をサポートするため、グッドコーチに求められるリーダーシップ、コミュニケーションスキル、論理的思考力、規範意識、忍耐力、克己心等の「人間力」を高めることが必要です。
3.常に学び続けましょう。
自らの経験だけに基づいたコーチングから脱却し、国内外のスポーツを取り巻く環境に対応した効果的なコーチングを実践するため、最新の指導内容や指導法の習得に努め、競技横断的な知識・技能や、例えば、国際コーチング・エクセレンス評議会(ICCE)等におけるコーチングの国際的な情報を収集し、常に学び続けることが必要です。
4.プレーヤーのことを最優先に考えましょう。
プレーヤーの人格及びニーズや資質を尊重し、相互の信頼関係を築き、常に効果的なコミュニケーションにより、スポーツの価値や目的、トレーニング効果等についての共通認識の下、公平なコーチングを行うことが必要です。
5.自立したプレーヤーを育てましょう。
スポーツは、プレーヤーが年齢、性別、障害の有無に関わらず、その適性及び健康状態に応じて、安全に自主的かつ自律的に実践するものであることを自覚し、自ら考え、自ら工夫する、自立したプレーヤーとして育成することが必要です。
6.社会に開かれたコーチングに努めましょう。
コーチング環境を改善・充実するため、プレーヤーを取り巻くコーチ、家族、マネジャー、トレーナー、医師、教員等の様々な関係者(アントラージュ)と課題を共有し、社会に開かれたコーチングを行うことが必要です。
7.コーチの社会的信頼を高めましょう。
新しい時代にふさわしい、正しいコーチングを実践することを通して、スポーツそのものの価値やインテグリティ(高潔性)を高めるとともに、スポーツを通じて社会に貢献する人材を継続して育成・輩出することにより、コーチの社会的な信頼を高めることが必要です。
お問合せ先
文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ振興課
電話番号:03-5253-4111(内線2686)
ファクシミリ番号:03-6734-3792
- 関連記事
-
- 文部科学省「今後の地域スポーツ推進体制の在り方に関する有識者会議」 (2015/05/01)
- グッドコーチに向けた「7つの提言」 (2015/03/13)
- 文部科学省「マルチサポート事業(オリンピック冬季競技)ターゲット競技の指定について」 (2015/02/13)
- トップアスリートにおける強化・研究活動拠点の在り方について 【 最 終 報 告 】 (2015/01/26)
- スポーツ庁、選手強化へ予算一元化…五輪にらみ (2014/06/02)
- 時事公論「ソチ五輪メダル8個から見えたもの」 (2014/04/16)
- パラリンピック選手育成…障害者基本計画を決定 (2013/09/28)
- 「スポーツ・インテリジェンス―オリンピックの勝敗は情報戦で決まる」 (2013/09/17)
- 強化戦略、国主導で大転換 (2013/09/15)
- スポーツ界の未来はホリエモンの有料メルマガ的に変わるか!? (2013/09/15)
- 次世代アスリート発掘へ 国内初、JSCが10代対象に来年3月計画 (2013/09/14)
- 生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方について (2013/05/24)
- 雪好きの子供に育てる スキー場、キッズ向けサービス充実 (2013/02/20)
- スポーツ基本法改正へ 女子柔道の暴行問題受け 五輪招致への影響懸念 (2013/02/05)
- 「I LOVE SNOW」キャンペーン (2013/01/23)
スポンサーサイト
ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第2回) 議事要旨
ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第2回) 議事要旨
1.日時
平成26年9月9日(火曜日)
(中略)
5.議事要旨
○:委員,協力員
△:事務局
冒頭,会議の公開について,第2回会議の議事に評価に関する案件が含まれるため,非公開とすることについて,委員一同了承した。
(1)検証チーム報告書(案)について
事務方より,ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム報告書(案)に基づき説明が行われた後,質疑応答及び意見交換が行われた。
○スキーにおいては,今回マルチサポートにお世話になった。その用具開発の中で,例えばジャンプのスーツの開発や,ノルディックコンバインドの方ではスキーの裏に傷を付けるストラクチャーなどを導入した。ストラクチャーマシンを今回導入する上で,大きな問題が生じた。諸外国からの物を,税関を通して入れることが非常に面倒な作業だということを感じた。事前に,マルチサポート側の方でいろいろなことを調べて,入りやすいような仕組みに作っていただいたが,運搬を担当したドライバーの方が,ストラクチャーマシンをロシアに入れた際,必要な手続を行わずに入ってしまったと聞いている。今後はそのようなことが起きないように,今後検討するべきであると思う。最終的には関税を通ることができ,コンバインドチームでは,今回結果も出すことができたが。
○ナショナルトレーニングセンターの利用について。フィギュアスケートでは,競技別強化拠点として中京大学のリンクを活用しているが,トップアスリートと言われている人間が中京大学に所属している。彼らは個別に中京大学が貸切りにしているために,競技別強化拠点の利用人数に含まれていない。トップアスリートの利用者数がグラフに入っていないために,利用状況が悪いように見える。
○図11のフィギュアスケートの数値は40%強ですが,実際はもう少し上がるのか。
○上がると思う。
△正確なところを把握し,適宜対応する。
○ナショナルトレーニングセンターについて,味の素という冠を全然つけてなくていいのか。
△ネーミングライセンスについては,確認する。
○文章に関する指摘だが,「ナショナルトレーニングセンター(NTC)」と記載されているところ,2ページ目でNTCと定義しているのであれば「(NTC)」は要らないのではないか。
○既に2ページで「NTC」と書かれている。どちらかにか統一した方が良いのではないか。
○JISSによるメディカルチェックの実績について,NF要望チェックと派遣前チェックが相補的に活用されているという記述があるが,例えば24年度によると派遣前チェックが0であり,図1のイメージと異なるのではないか。
それから,NTCの活用状況については,NTCのトレーニングルームの利用実績のみが計上されているが,NFにおける指導者養成など,座学的な研修利用も,少なくはないのでは。そういった面でのNTCの存在意義や価値が追記されてもよいかと思う。
△1点目については,大きな国際大会がなかったことによって,派遣前チェックが0となっており,NF要望チェックとの相互補完性について記述している。2点目については,指導者に関する記述が可能かどうか検討する。
○1点目については,「平成24年度は,大きな国際大会は開催されなかった」などと注釈を入れたらどうか。
○マルチサポートのアスリート支援の利用状況について,フィギュアスケートの日本代表レベルの選手は強化合宿を毎年行っておりまして,本文の記載だと「強化合宿等の強化活動は行わず」と書かれているので全く行っていないととらわれてしまう可能性がある。「日本代表レベルの選手は」と「個々の」の間をカットして書いたらどうか。
○私もそれを質問したかったところ。実際は合宿をしているのか。
○毎年行っている。外人コーチを呼んで毎年中京大でやっている。
○事務局の方で修正するように。
○図4にノルディック複合における体力測定の写真とグラフが載っているが,写真の中の選手の走り方がクラシカルという走り方で,恐らくクロスカントリーの画像を使っているのではないか。
△修正する。
○非常に言葉的な問題だが,図12のオレンジの棒グラフについて,平成24年度から25年度では2種別増えていると書かれている。種目と種別とはどのように違うのか。2つ増えたというのは,何と何が増えたのか。例えば,表8では,「ターゲット種別の競技結果」というタイトルで種別と書かれている,種目と種別とは,どのように使い分けられているのか。
△参考資料の11ページ,「平成25年ターゲット競技種別」と書かれているが,ここの競技種別というのはスキージャンプなどの部分を言うもの。種目となると,表の右側の部分を指す。
○表8であれば,ジャンプは男子も女子も同じ種別ということか。それとも男子と女子と種別としては,違うということなのか。
△同じである。
○「外部有識者で構成されるターゲット競技種目選定チームにおいて」という記述に続いて,幾つかの基準が出ているが,「今後の選手の状況」というのは具体的にどういうことを意味されるのか。
△今後の選手の状況については,次期オリンピックでメダル獲得が期待される潜在的能力を有するアスリートの状況や,競技で実績を持つアスリートのコンディション等を評価するというようなもの。
○成績とコンディションと両方入っているということか。
○はい。
○やや文章的な問題になるのが,28ページの「研究開発には」というところについて,「今大会に向けた研究開発を無駄にしないためには,次回以降の競技大会においてのその知見や」と書かれているが,「次回以降の競技大会において」という記述が不自然に感じる。
○「次回以降の競技大会に向けて」というような表現が適切か。
○図14の中で,リカバリーボックスというものは酸素カプセルを指すのか。
○コンディショニングミールとは,おにぎりとバナナとオレンジジュース等をセットにした持ち出し用の食事セットのこと。
○海外のいろいろな取組の例が書かれている点は,非常に内容が面白くて,特徴が出ていると思う。カナダの取組の中で,OTPが出ているが,OTPとは何かということが具体的に書かれていない。OTPはカナダオリンピック委員会や,カナダパラリンピック委員会,スポーツカナダ,スポーツセンターなどが一緒に集まったコラボレーション組織である。これは,今まで縦割りで行っていたのを,情報共有して一緒にやっていこうという狙いがあったと思う。OTPとは何かということを書いた方が,非常に日本にもヒントになると思う。
○ものすごく数あるプロジェクトのうちで,うまくまとめていただいた。ただし,本文にも書いてあるが,開発したが間に合わなかったりして残念なものもあった。その辺りも今後改良していきたい。時間がかかって,開発が間に合わなかったというのは,それは事実であり,非常に申し訳ないと思っている。今後どんどん進めていきたいと思う。今のところ,平成22年から始めて,大分うまくなって,もう悪いのはすぐやめてしまっているが,継続していけるのは是非継続したいと思う。
○最後のまとめのところにも,そういう辺りを匂わせるような課題が書かれているかと思う。やはり,検証は良いところだけではなくて,課題も入れるべきだと思う。連携が必ずしもスムーズではなかったと,このような点も書かれている。
○これで多分完璧ということではなく,今後いろいろな課題が出てくると思うので,これを土台として先へ進むことができればと思う。ロシアの取組のところとカナダの関係について,ロシアはカナダのOn the Podiumのスタッフを相当持っていったというのが明確であり,その辺がどのような,数値だけでなくて,表れているのかと。直接持ってこられたコーチからも話を聞いたが,相当アグレッシブに刈り取っていったようだ。今後,2020年に向けて,どのような方向があるのかということも含めて検証していった方が良い。日本の風土だと,いろいろと難しいこともあるかと思うが。
○外国から優秀なコーチをたくさん呼ぶことは良いと思うが,2020年や2030年を考えると,日本のコーチの能力をもっと上げないといけないと思う。データを十分に理解できなければならず,データを選手にかみ砕いて伝えることが,すごく重要になってくると思う。これは報告書に書く必要はないが,コーチについて余り報告がないと気が付いた。コーチの育成も長期的に見ると重要かなと思っている。
○即時フィードバックシステムがスキージャンプにあったが,選手が下で飛んだ後,コーチは上の踏切台の横で映像を見ながらアドバイスができるという素晴らしいシステムであった。こうした開発した機器を,今度はコーチがうまく使えるように,わかりやすく伝えていくという,講習していくということも次のもうひとつ課題なのではないか。
○最近の傾向はトレーニングモニターなど,試合の情報をいかに選手にうまく伝えるかといった方向に,これから研究の方がシフトしていく。7月に国際大会があった際,オランダやアメリカのメーカーが,随分その辺りに力を入れている。モニタリング,しかも競技の中でモニタリングという傾向になっており,それをコーチがどう伝えるのかが勝負になってくと思う。
○夏のオリンピックの場合は,例えば世界記録がたくさん出たか,などで世界レベルが上がっているとか,あるいは難易度の高い体操の競技のレベルが上がっているとかということが,目に見えやすい。一方,冬の場合は環境などの要因があって,なかなか見えにくい部分があると思うが,例えばスピードスケートなどの記録の推移がどう変化していて,次を狙うためにはどれぐらいのレベルになりそうだなど,そのようなレベルに関して分かるものがあるといいかと思う。それから,間接的なものになるが,2020年東京招致が決まった背景には,一度も日本人選手がドーピングで引っかかっておらず,非常にクリーンな日本選手団というイメージがあった。そのような取組や背景など,あるいはどれぐらいの実数の検査者がいて,結果がどうだったかなどがあった方がいいと思う。結果を上げるための支援と,もう一つは足を引っ張られないためのしっかりとした後方支援というものが,双方合わさって結果につながっているのではないかと感じた。
△各国の競技レベル等について,第1回会議において,何を評価していくのかを話し合ったが,このソチオリンピックにつきましては,JOCの方でも日本代表選手団報告書において,また,各NFの方でも競技レベルも含めて検証しているところ。そのため,我々においては,国の直接の事業を評価していくということとなっていた。御指摘の部分は,JOCの報告書の中にある程度あったので,直接的には書かなかったという背景がある。
○今,国の,ということがあったが,拠点の話の中で,国体で整備したジャンプ台のことが挙げられてない。このジャンプ台も結構利用されていたので,適切であれば,多分日本の最先端のジャンプ台だと思うので,書いていただければいいかなと思う。
○JISS,NTCだけではなく,他の拠点施設に関しても書いた方がいいのではないかと,御指摘いただいた。冬季国体は,totoに大きく御支援いただいている。
○競技力向上施策の国際比較の中で,ロシアの海外コーチとの関係性というところを読んでいて思ったのだが,日本の競技では,日本人のコーチが多いのか,それとも海外のコーチが多いのか,日本もこうした比較をしたら良いかと思う。
この後,座長より,本日の会議における意見を含め,報告書(案)の取扱いについては,座長に一任してもらいたい旨の発言があり,委員から了承された。
最後に,最終回に当たり座長及び事務局より挨拶があり,会議が終了した。
1.日時
平成26年9月9日(火曜日)
(中略)
5.議事要旨
○:委員,協力員
△:事務局
冒頭,会議の公開について,第2回会議の議事に評価に関する案件が含まれるため,非公開とすることについて,委員一同了承した。
(1)検証チーム報告書(案)について
事務方より,ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム報告書(案)に基づき説明が行われた後,質疑応答及び意見交換が行われた。
○スキーにおいては,今回マルチサポートにお世話になった。その用具開発の中で,例えばジャンプのスーツの開発や,ノルディックコンバインドの方ではスキーの裏に傷を付けるストラクチャーなどを導入した。ストラクチャーマシンを今回導入する上で,大きな問題が生じた。諸外国からの物を,税関を通して入れることが非常に面倒な作業だということを感じた。事前に,マルチサポート側の方でいろいろなことを調べて,入りやすいような仕組みに作っていただいたが,運搬を担当したドライバーの方が,ストラクチャーマシンをロシアに入れた際,必要な手続を行わずに入ってしまったと聞いている。今後はそのようなことが起きないように,今後検討するべきであると思う。最終的には関税を通ることができ,コンバインドチームでは,今回結果も出すことができたが。
○ナショナルトレーニングセンターの利用について。フィギュアスケートでは,競技別強化拠点として中京大学のリンクを活用しているが,トップアスリートと言われている人間が中京大学に所属している。彼らは個別に中京大学が貸切りにしているために,競技別強化拠点の利用人数に含まれていない。トップアスリートの利用者数がグラフに入っていないために,利用状況が悪いように見える。
○図11のフィギュアスケートの数値は40%強ですが,実際はもう少し上がるのか。
○上がると思う。
△正確なところを把握し,適宜対応する。
○ナショナルトレーニングセンターについて,味の素という冠を全然つけてなくていいのか。
△ネーミングライセンスについては,確認する。
○文章に関する指摘だが,「ナショナルトレーニングセンター(NTC)」と記載されているところ,2ページ目でNTCと定義しているのであれば「(NTC)」は要らないのではないか。
○既に2ページで「NTC」と書かれている。どちらかにか統一した方が良いのではないか。
○JISSによるメディカルチェックの実績について,NF要望チェックと派遣前チェックが相補的に活用されているという記述があるが,例えば24年度によると派遣前チェックが0であり,図1のイメージと異なるのではないか。
それから,NTCの活用状況については,NTCのトレーニングルームの利用実績のみが計上されているが,NFにおける指導者養成など,座学的な研修利用も,少なくはないのでは。そういった面でのNTCの存在意義や価値が追記されてもよいかと思う。
△1点目については,大きな国際大会がなかったことによって,派遣前チェックが0となっており,NF要望チェックとの相互補完性について記述している。2点目については,指導者に関する記述が可能かどうか検討する。
○1点目については,「平成24年度は,大きな国際大会は開催されなかった」などと注釈を入れたらどうか。
○マルチサポートのアスリート支援の利用状況について,フィギュアスケートの日本代表レベルの選手は強化合宿を毎年行っておりまして,本文の記載だと「強化合宿等の強化活動は行わず」と書かれているので全く行っていないととらわれてしまう可能性がある。「日本代表レベルの選手は」と「個々の」の間をカットして書いたらどうか。
○私もそれを質問したかったところ。実際は合宿をしているのか。
○毎年行っている。外人コーチを呼んで毎年中京大でやっている。
○事務局の方で修正するように。
○図4にノルディック複合における体力測定の写真とグラフが載っているが,写真の中の選手の走り方がクラシカルという走り方で,恐らくクロスカントリーの画像を使っているのではないか。
△修正する。
○非常に言葉的な問題だが,図12のオレンジの棒グラフについて,平成24年度から25年度では2種別増えていると書かれている。種目と種別とはどのように違うのか。2つ増えたというのは,何と何が増えたのか。例えば,表8では,「ターゲット種別の競技結果」というタイトルで種別と書かれている,種目と種別とは,どのように使い分けられているのか。
△参考資料の11ページ,「平成25年ターゲット競技種別」と書かれているが,ここの競技種別というのはスキージャンプなどの部分を言うもの。種目となると,表の右側の部分を指す。
○表8であれば,ジャンプは男子も女子も同じ種別ということか。それとも男子と女子と種別としては,違うということなのか。
△同じである。
○「外部有識者で構成されるターゲット競技種目選定チームにおいて」という記述に続いて,幾つかの基準が出ているが,「今後の選手の状況」というのは具体的にどういうことを意味されるのか。
△今後の選手の状況については,次期オリンピックでメダル獲得が期待される潜在的能力を有するアスリートの状況や,競技で実績を持つアスリートのコンディション等を評価するというようなもの。
○成績とコンディションと両方入っているということか。
○はい。
○やや文章的な問題になるのが,28ページの「研究開発には」というところについて,「今大会に向けた研究開発を無駄にしないためには,次回以降の競技大会においてのその知見や」と書かれているが,「次回以降の競技大会において」という記述が不自然に感じる。
○「次回以降の競技大会に向けて」というような表現が適切か。
○図14の中で,リカバリーボックスというものは酸素カプセルを指すのか。
○コンディショニングミールとは,おにぎりとバナナとオレンジジュース等をセットにした持ち出し用の食事セットのこと。
○海外のいろいろな取組の例が書かれている点は,非常に内容が面白くて,特徴が出ていると思う。カナダの取組の中で,OTPが出ているが,OTPとは何かということが具体的に書かれていない。OTPはカナダオリンピック委員会や,カナダパラリンピック委員会,スポーツカナダ,スポーツセンターなどが一緒に集まったコラボレーション組織である。これは,今まで縦割りで行っていたのを,情報共有して一緒にやっていこうという狙いがあったと思う。OTPとは何かということを書いた方が,非常に日本にもヒントになると思う。
○ものすごく数あるプロジェクトのうちで,うまくまとめていただいた。ただし,本文にも書いてあるが,開発したが間に合わなかったりして残念なものもあった。その辺りも今後改良していきたい。時間がかかって,開発が間に合わなかったというのは,それは事実であり,非常に申し訳ないと思っている。今後どんどん進めていきたいと思う。今のところ,平成22年から始めて,大分うまくなって,もう悪いのはすぐやめてしまっているが,継続していけるのは是非継続したいと思う。
○最後のまとめのところにも,そういう辺りを匂わせるような課題が書かれているかと思う。やはり,検証は良いところだけではなくて,課題も入れるべきだと思う。連携が必ずしもスムーズではなかったと,このような点も書かれている。
○これで多分完璧ということではなく,今後いろいろな課題が出てくると思うので,これを土台として先へ進むことができればと思う。ロシアの取組のところとカナダの関係について,ロシアはカナダのOn the Podiumのスタッフを相当持っていったというのが明確であり,その辺がどのような,数値だけでなくて,表れているのかと。直接持ってこられたコーチからも話を聞いたが,相当アグレッシブに刈り取っていったようだ。今後,2020年に向けて,どのような方向があるのかということも含めて検証していった方が良い。日本の風土だと,いろいろと難しいこともあるかと思うが。
○外国から優秀なコーチをたくさん呼ぶことは良いと思うが,2020年や2030年を考えると,日本のコーチの能力をもっと上げないといけないと思う。データを十分に理解できなければならず,データを選手にかみ砕いて伝えることが,すごく重要になってくると思う。これは報告書に書く必要はないが,コーチについて余り報告がないと気が付いた。コーチの育成も長期的に見ると重要かなと思っている。
○即時フィードバックシステムがスキージャンプにあったが,選手が下で飛んだ後,コーチは上の踏切台の横で映像を見ながらアドバイスができるという素晴らしいシステムであった。こうした開発した機器を,今度はコーチがうまく使えるように,わかりやすく伝えていくという,講習していくということも次のもうひとつ課題なのではないか。
○最近の傾向はトレーニングモニターなど,試合の情報をいかに選手にうまく伝えるかといった方向に,これから研究の方がシフトしていく。7月に国際大会があった際,オランダやアメリカのメーカーが,随分その辺りに力を入れている。モニタリング,しかも競技の中でモニタリングという傾向になっており,それをコーチがどう伝えるのかが勝負になってくと思う。
○夏のオリンピックの場合は,例えば世界記録がたくさん出たか,などで世界レベルが上がっているとか,あるいは難易度の高い体操の競技のレベルが上がっているとかということが,目に見えやすい。一方,冬の場合は環境などの要因があって,なかなか見えにくい部分があると思うが,例えばスピードスケートなどの記録の推移がどう変化していて,次を狙うためにはどれぐらいのレベルになりそうだなど,そのようなレベルに関して分かるものがあるといいかと思う。それから,間接的なものになるが,2020年東京招致が決まった背景には,一度も日本人選手がドーピングで引っかかっておらず,非常にクリーンな日本選手団というイメージがあった。そのような取組や背景など,あるいはどれぐらいの実数の検査者がいて,結果がどうだったかなどがあった方がいいと思う。結果を上げるための支援と,もう一つは足を引っ張られないためのしっかりとした後方支援というものが,双方合わさって結果につながっているのではないかと感じた。
△各国の競技レベル等について,第1回会議において,何を評価していくのかを話し合ったが,このソチオリンピックにつきましては,JOCの方でも日本代表選手団報告書において,また,各NFの方でも競技レベルも含めて検証しているところ。そのため,我々においては,国の直接の事業を評価していくということとなっていた。御指摘の部分は,JOCの報告書の中にある程度あったので,直接的には書かなかったという背景がある。
○今,国の,ということがあったが,拠点の話の中で,国体で整備したジャンプ台のことが挙げられてない。このジャンプ台も結構利用されていたので,適切であれば,多分日本の最先端のジャンプ台だと思うので,書いていただければいいかなと思う。
○JISS,NTCだけではなく,他の拠点施設に関しても書いた方がいいのではないかと,御指摘いただいた。冬季国体は,totoに大きく御支援いただいている。
○競技力向上施策の国際比較の中で,ロシアの海外コーチとの関係性というところを読んでいて思ったのだが,日本の競技では,日本人のコーチが多いのか,それとも海外のコーチが多いのか,日本もこうした比較をしたら良いかと思う。
この後,座長より,本日の会議における意見を含め,報告書(案)の取扱いについては,座長に一任してもらいたい旨の発言があり,委員から了承された。
最後に,最終回に当たり座長及び事務局より挨拶があり,会議が終了した。
- 関連記事
-
- ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第2回) 議事要旨 (2015/03/12)
- ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第1回) 議事要旨 (2015/03/12)
- Asian nations face long run to become competitive (2015/01/30)
- 五輪招致、今月中にも表明=2026年冬季大会-札幌市 (2014/11/27)
- 札幌市長、26年冬季五輪招致に意欲 市負担は715億円と試算 (2014/09/26)
- 平昌冬季五輪委員長が辞任…深刻なスポンサー・収入問題も一因か (2014/07/23)
- ソチ五輪タイ代表選手に調査結果で厳罰も (2014/07/20)
- 冬季五輪でオスロ高評価 IOC、22年招致で1次選考 (2014/07/08)
- 最優秀賞に羽生選手 平成25年度JOCスポーツ賞受賞者決定 (2014/06/07)
- スポーツ・アカデミー形成支援事業の委託先の選定について (2014/06/03)
- 北海道・札幌市、五輪招致の調査開始 アルペンコースなど、年内に判断 (2014/05/21)
- 【スノボ】歩夢&小野塚“地元”に国際基準HP建設計画 (2014/03/24)
- フェニンガーが女子大回転で連勝、アルペンスキーW杯 (2014/03/08)
- ソチ五輪で興味を持った競技は? 2位フィギュアスケート、3位スキージャンプ (2014/03/07)
- スポニチフォーラム:緊急検証ソチ五輪シンポで意見交換 (2014/03/05)
ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第1回) 議事要旨
ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第1回) 議事要旨
ずいぶん遅れてアップされています。
原文は、こちら。
1.日時
平成26年3月24日(月曜日)10時00分~12時00分
(中略)
5.議事要旨
○:委員、協力員、説明員(随行者からの補足説明を含む)
△:事務局
(1)検証チーム座長の選任等について
事務局より、配付資料について説明があった後、委員の互選による座長の選任が行われ、山口委員が座長に就任した。
また、会議の公開について、事務局より資料2に基づき説明が行われ、(案)のとおり決定された。
第1回会議の議事については、評価に関する案件については非公開とすることが委員一同了承した。
(2)ソチ冬季オリンピックの競技結果について
公益財団法人日本オリンピック委員会(以下、JOC)より、資料3の説明が行われた後、質疑応答、意見交換が行われた。
○スキー競技については、過去2大会でメダルが取れていない状況の中で、良い意味でプレッシャーがあった。そして、JOC、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下、JSC)、マルチサポート事業も含めて、各方面から多くのサポートをいただけたことで、組織として一つになったように感じた。そういったことがメダルの増加につながったのかもしれない。
○メダルの数だけでは評価できないと思うが、国外開催という条件付ではあるものの、スポーツ基本計画の目標を達成したことは良かったことだと思う。
○入賞総数、メダル獲得数が国外で開催された大会では過去最多ということで、これはすばらしかった。事前にメダル獲得を期待された選手が結果的に取れなかった、メダル獲得が難しいと想定されていた選手がメダルを獲得したというケースもあり、事前に評価されていた実力がどう発揮されてメダルにつながったのか、つながらなかったのかという分析が必要だと感じた。
○結果的に見て、スキー競技ではメダルが取れたものの、スケート競技ではフィギュアスケートの羽生結弦選手しかメダルが取れなかったということで、もう少し強化していく必要があると感じた。しかし、JOCや各企業のサポート、さらにソチに設置されていたマルチサポート・ハウスはとても充実しており、選手にとっては良い環境であったと思うので、選手たちの声もいろいろと聞いてみたい。
○前回のバンクーバー大会では金メダルが獲得できなかったため、今回のソチ大会では金メダルが取りたかった。そして、氷と雪の競技で必ずどの競技もメダルを獲得するということを目標に掲げてやってきた4年間だった。結果的には、金メダルが1つに終わり、長野大会の成績を目標としていた10個のメダル獲得には2個届かなかった。見る側の方々からは、結果的に高い評価を得ていただいたのではないかと思うが、実際に4年間準備してやってきた側としては、非常に厳しいオリンピックだった。
○世界ランキング1位になるような実力者が、金メダルを確実に取ることが一番難しいと感じているが、今回も同じような状況になってしまった。オリンピックというのは、どうしても特別扱いをしてしまう部分があるが、その特別扱いが選手たちに悪い方向に影響を与えてしまった。今後の対応がこれからの大きな課題。
○特に、スピードスケート、ショートトラックについては選手の育成が進んでおらず、これまでと同じ選手で戦うこととなってしまった。また、選手を育てられていないのに、いつまでも同じコーチを務めている現状も打破していかなければならない。ボランティアのような立場で選手の指導を行っている場合も多いため、プロフェッショナルのコーチ育成を、国としてどう位置づけていくかが、これから2020年に向けて重要なことではないか。
○客観的なところと、実際に戦うところでの評価があるかと思うが、2020年に向けてどうつなげるかといった視点も必要。そうなると今回のロシアの強化体制や平昌に向けた韓国の強化体制を分析することも必要ではないか。
○国体の施設が強化という視点から使われているかも重要。2017年の札幌冬季アジア競技大会のために整備される施設や、ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)競技別強化拠点施設についても、併せて考えていく必要がある。
○2017年冬季アジア競技大会、2019年ラグビーワールドカップを視野に入れると、NTCを確実に拡大していくというのは当然だが、もう少し競技別拠点を増やしていくことも重要。選手強化はもちろん、地域での選手発掘にもつながっていくのではないか。
○NTC競技別強化拠点施設は夏季競技と冬季競技の場合で少し意味合いが違う。夏の場合はトップレベルの選手が集中的に合宿を行い、強化をできる状況にあるが、冬の場合はトップレベルの選手は外国を拠点にして強化を行っている。その下のレベルのジュニアやユースの選手が、日本国内のNTC競技別強化拠点施設でトレーニングを積んで、トップに行くという要素を持たせることも大事。
○平昌大会だけをターゲットにして終わるのではなくて、長期的なビジョンの中で平昌大会を位置づけて選手を育成することが大事。
○スキー・ノルディック複合では、夏の間はNTC競技別強化拠点施設をメインに強化合宿を行い、それから海外に遠征を行う。例えば、雪の上で一年中走れるトンネルがあるドイツや一年中雪のある氷河でトレーニングを行ったり、夏の大会に出場したりしている。そういった形で、NTC競技別強化拠点施設と、海外の環境の良いところを活用し、強化をしている。
○評価をする際には、選手などの支援を受けた側からの評価も大事。アンケートなどで、選手の声を聞くことはできるか。
○競技終了後に選手やスタッフに対し、マルチサポート・ハウスの利用に関するアンケート調査を行っている。
○研究開発については、アンケート調査を行っているわけではないが、用品用具を提供した選手に使い勝手などを聞いている。
○選手の意見は非常に重要。しっかりと整理していただきたい。
○サポートを受けたスタッフとしては、マルチサポートには非常に助けられた。他国が行っているサポートを日本も受けられるということで、精神的にもアドバンテージを持つことができた。今後も続けていただければ、日本も強くなっていくと思う。
○オリンピックは選手本人が普通にやったとしても、周りが普通ではない状況になっている。その中で、いかにオリンピックを普通以下の大会として捉え、100%の実力を発揮できるかという戦いになってくる。
○オリンピックは4年に1度ということで、メディアの注目度も違う。オリンピック開催の年は、取材対応なども増えるため、時間の使い方も通常とは違ったものになる。
○ソチオリンピックでは、マルチサポート・ハウスのおかげで、入浴が可能であったり、メディカルスタッフがそろっていたり、日本食を食べることができたりとふだんの大会より有利な部分がたくさんあった。そういう意味では、通常通りの環境で試合に臨むことができたと思う。
○今回の日本のサポートが諸外国と比べてどうなのかという視点も必要ではないか。
○他国も情報管理を行っている部分があるかと思うが、公開されている情報だけでも集めることはできないか。
○今回の検証チームでパラリンピックの強化の視点も持つのか。
○オリンピックとパラリンピックは一つのものではあるが、サポート体制は全く違う。それぞれ別に考えていかないと、本当に選手のためのものにはならない。
○サポートの充実を図っていく上では、最終的には予算の問題が出てくる。マルチサポートなどで選手を支援することがどれだけ価値のあることなのかしっかりと説明し、スポーツ界にはお金をかけるだけの価値があるといったメッセージを、スポーツ界が発信していく必要がある。
○今回の検証チームでも、国民に対し、国費の使い方とその成果をしっかりと説明する必要がある。報告書をどうやって国民に伝えていくかは考えなければならない。
(3)その他
山口座長より、ワーキンググループの設置について提案があり、委員一同了承した。また、ワーキンググループの人選について、座長一任とすることが了承された。
最後に事務局から今後の日程について説明があり、会議が終了した。
以上
ずいぶん遅れてアップされています。
原文は、こちら。
1.日時
平成26年3月24日(月曜日)10時00分~12時00分
(中略)
5.議事要旨
○:委員、協力員、説明員(随行者からの補足説明を含む)
△:事務局
(1)検証チーム座長の選任等について
事務局より、配付資料について説明があった後、委員の互選による座長の選任が行われ、山口委員が座長に就任した。
また、会議の公開について、事務局より資料2に基づき説明が行われ、(案)のとおり決定された。
第1回会議の議事については、評価に関する案件については非公開とすることが委員一同了承した。
(2)ソチ冬季オリンピックの競技結果について
公益財団法人日本オリンピック委員会(以下、JOC)より、資料3の説明が行われた後、質疑応答、意見交換が行われた。
○スキー競技については、過去2大会でメダルが取れていない状況の中で、良い意味でプレッシャーがあった。そして、JOC、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下、JSC)、マルチサポート事業も含めて、各方面から多くのサポートをいただけたことで、組織として一つになったように感じた。そういったことがメダルの増加につながったのかもしれない。
○メダルの数だけでは評価できないと思うが、国外開催という条件付ではあるものの、スポーツ基本計画の目標を達成したことは良かったことだと思う。
○入賞総数、メダル獲得数が国外で開催された大会では過去最多ということで、これはすばらしかった。事前にメダル獲得を期待された選手が結果的に取れなかった、メダル獲得が難しいと想定されていた選手がメダルを獲得したというケースもあり、事前に評価されていた実力がどう発揮されてメダルにつながったのか、つながらなかったのかという分析が必要だと感じた。
○結果的に見て、スキー競技ではメダルが取れたものの、スケート競技ではフィギュアスケートの羽生結弦選手しかメダルが取れなかったということで、もう少し強化していく必要があると感じた。しかし、JOCや各企業のサポート、さらにソチに設置されていたマルチサポート・ハウスはとても充実しており、選手にとっては良い環境であったと思うので、選手たちの声もいろいろと聞いてみたい。
○前回のバンクーバー大会では金メダルが獲得できなかったため、今回のソチ大会では金メダルが取りたかった。そして、氷と雪の競技で必ずどの競技もメダルを獲得するということを目標に掲げてやってきた4年間だった。結果的には、金メダルが1つに終わり、長野大会の成績を目標としていた10個のメダル獲得には2個届かなかった。見る側の方々からは、結果的に高い評価を得ていただいたのではないかと思うが、実際に4年間準備してやってきた側としては、非常に厳しいオリンピックだった。
○世界ランキング1位になるような実力者が、金メダルを確実に取ることが一番難しいと感じているが、今回も同じような状況になってしまった。オリンピックというのは、どうしても特別扱いをしてしまう部分があるが、その特別扱いが選手たちに悪い方向に影響を与えてしまった。今後の対応がこれからの大きな課題。
○特に、スピードスケート、ショートトラックについては選手の育成が進んでおらず、これまでと同じ選手で戦うこととなってしまった。また、選手を育てられていないのに、いつまでも同じコーチを務めている現状も打破していかなければならない。ボランティアのような立場で選手の指導を行っている場合も多いため、プロフェッショナルのコーチ育成を、国としてどう位置づけていくかが、これから2020年に向けて重要なことではないか。
○客観的なところと、実際に戦うところでの評価があるかと思うが、2020年に向けてどうつなげるかといった視点も必要。そうなると今回のロシアの強化体制や平昌に向けた韓国の強化体制を分析することも必要ではないか。
○国体の施設が強化という視点から使われているかも重要。2017年の札幌冬季アジア競技大会のために整備される施設や、ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)競技別強化拠点施設についても、併せて考えていく必要がある。
○2017年冬季アジア競技大会、2019年ラグビーワールドカップを視野に入れると、NTCを確実に拡大していくというのは当然だが、もう少し競技別拠点を増やしていくことも重要。選手強化はもちろん、地域での選手発掘にもつながっていくのではないか。
○NTC競技別強化拠点施設は夏季競技と冬季競技の場合で少し意味合いが違う。夏の場合はトップレベルの選手が集中的に合宿を行い、強化をできる状況にあるが、冬の場合はトップレベルの選手は外国を拠点にして強化を行っている。その下のレベルのジュニアやユースの選手が、日本国内のNTC競技別強化拠点施設でトレーニングを積んで、トップに行くという要素を持たせることも大事。
○平昌大会だけをターゲットにして終わるのではなくて、長期的なビジョンの中で平昌大会を位置づけて選手を育成することが大事。
○スキー・ノルディック複合では、夏の間はNTC競技別強化拠点施設をメインに強化合宿を行い、それから海外に遠征を行う。例えば、雪の上で一年中走れるトンネルがあるドイツや一年中雪のある氷河でトレーニングを行ったり、夏の大会に出場したりしている。そういった形で、NTC競技別強化拠点施設と、海外の環境の良いところを活用し、強化をしている。
○評価をする際には、選手などの支援を受けた側からの評価も大事。アンケートなどで、選手の声を聞くことはできるか。
○競技終了後に選手やスタッフに対し、マルチサポート・ハウスの利用に関するアンケート調査を行っている。
○研究開発については、アンケート調査を行っているわけではないが、用品用具を提供した選手に使い勝手などを聞いている。
○選手の意見は非常に重要。しっかりと整理していただきたい。
○サポートを受けたスタッフとしては、マルチサポートには非常に助けられた。他国が行っているサポートを日本も受けられるということで、精神的にもアドバンテージを持つことができた。今後も続けていただければ、日本も強くなっていくと思う。
○オリンピックは選手本人が普通にやったとしても、周りが普通ではない状況になっている。その中で、いかにオリンピックを普通以下の大会として捉え、100%の実力を発揮できるかという戦いになってくる。
○オリンピックは4年に1度ということで、メディアの注目度も違う。オリンピック開催の年は、取材対応なども増えるため、時間の使い方も通常とは違ったものになる。
○ソチオリンピックでは、マルチサポート・ハウスのおかげで、入浴が可能であったり、メディカルスタッフがそろっていたり、日本食を食べることができたりとふだんの大会より有利な部分がたくさんあった。そういう意味では、通常通りの環境で試合に臨むことができたと思う。
○今回の日本のサポートが諸外国と比べてどうなのかという視点も必要ではないか。
○他国も情報管理を行っている部分があるかと思うが、公開されている情報だけでも集めることはできないか。
○今回の検証チームでパラリンピックの強化の視点も持つのか。
○オリンピックとパラリンピックは一つのものではあるが、サポート体制は全く違う。それぞれ別に考えていかないと、本当に選手のためのものにはならない。
○サポートの充実を図っていく上では、最終的には予算の問題が出てくる。マルチサポートなどで選手を支援することがどれだけ価値のあることなのかしっかりと説明し、スポーツ界にはお金をかけるだけの価値があるといったメッセージを、スポーツ界が発信していく必要がある。
○今回の検証チームでも、国民に対し、国費の使い方とその成果をしっかりと説明する必要がある。報告書をどうやって国民に伝えていくかは考えなければならない。
(3)その他
山口座長より、ワーキンググループの設置について提案があり、委員一同了承した。また、ワーキンググループの人選について、座長一任とすることが了承された。
最後に事務局から今後の日程について説明があり、会議が終了した。
以上
- 関連記事
-
- ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第2回) 議事要旨 (2015/03/12)
- ソチ冬季オリンピックにおける選手育成・強化・支援等に関する検証チーム(第1回) 議事要旨 (2015/03/12)
- Asian nations face long run to become competitive (2015/01/30)
- 五輪招致、今月中にも表明=2026年冬季大会-札幌市 (2014/11/27)
- 札幌市長、26年冬季五輪招致に意欲 市負担は715億円と試算 (2014/09/26)
- 平昌冬季五輪委員長が辞任…深刻なスポンサー・収入問題も一因か (2014/07/23)
- ソチ五輪タイ代表選手に調査結果で厳罰も (2014/07/20)
- 冬季五輪でオスロ高評価 IOC、22年招致で1次選考 (2014/07/08)
- 最優秀賞に羽生選手 平成25年度JOCスポーツ賞受賞者決定 (2014/06/07)
- スポーツ・アカデミー形成支援事業の委託先の選定について (2014/06/03)
- 北海道・札幌市、五輪招致の調査開始 アルペンコースなど、年内に判断 (2014/05/21)
- 【スノボ】歩夢&小野塚“地元”に国際基準HP建設計画 (2014/03/24)
- フェニンガーが女子大回転で連勝、アルペンスキーW杯 (2014/03/08)
- ソチ五輪で興味を持った競技は? 2位フィギュアスケート、3位スキージャンプ (2014/03/07)
- スポニチフォーラム:緊急検証ソチ五輪シンポで意見交換 (2014/03/05)
「なぜ日本の大学生は欧米の大学生に比べて勉強しないのか」
「なぜ日本の大学生は欧米の大学生に比べて勉強しないのか」
鈴木 典比古 公立大学法人国際教養大学理事長・学長
大学分科会(第108回)・大学教育部会(第20回)合同会議 配付資料より
日本人の大学生が欧米の大学生に比べて勉強していないという状況は東京大学・大学経営政策研究センター「全国大学生調査」(2007年、サンプル数44,905人)による大学1年生の週平均勉強時間数の比較でも示されているが、米国で10年、日本で26年程教鞭をとった私の個人的な経験からしても事実であると思う(ただし、私が学長を務めたICUの学生の名誉のために付け加えるならば、彼らの多くは米国の学生並みに勉強をしていると言える)。これには日米の大学生の生活・学習環境の違いに帰される面もある。日本の大学生が大学で勉強しない理由として、以下のような事情があるのではなかろうか。(ただし、以下のコメントでは、平均的な日米の学生を想定している)
○1 日本の大学生は高校での受験勉強(暗記型)で疲弊した後に大学に入ってくる。しかも、2~3月に大学に合格すると、その疲弊を回復する間もなく、4月には入学して大学生活が始まる。大学生活の最初から、自ら学習する習慣が身についていない。また、高校の時期に時間的な余裕や考える機会が余りないことから、大学に来る目的を明確に自覚していない学生が多い。大学生活を含めた自分の生き方を若い時期のどこかの時点で真剣に考えなければならない。しかし、その事を経験しないまま受験→大学生活→就職→職業生活→退職という人生のレールを歩いている。これは多くの日本人の一様な人生模様であると言ってよいであろう。
○2 米国のリベラルアーツ系大学では入学の時点では学生の専攻は前もって決まっていない。1~2年次に一般教育を履修しながら自分の専攻分野(Major)を決めてゆくのである。この段階は自分の適性、進路、職業、人生と専攻分野をいかに関連付けるか模索する時期で、大学生活にとって重要な体験の時期である。ところが、日本では大学の入学試験が専攻分野別の入試なので、高校の受験勉強(暗記型)のみで大学への進路決定が短絡的になされてしまうことが多い。高校での進路指導も偏差値による進路決定や志望校分別が強いて言うならば機械的に行われている。全人教育(後述)を行うとされる学士課程教育に入学してくる新入生が高校の段階で既にこのような機械的進路指導と分別を受けてくることの矛盾を考えなければならない。真の意味での高大連携が出来ていない。しかし、日本の各大学が独自の偏った入試問題によって入試選抜を行っている点にも大いに原因がある。この事が高校教育のあるべき姿を歪めていることは否定できない。
○3 米国の多くの大学は都会を離れた閑静な田舎に立地し、大学町を形成している場合が多い。特にキャンパスを州政府から供与されているthe land grant universityやリベラルアーツ系の小規模大学はそうである。この様なキャンパス環境では学生が勉学や日常生活に支障を来さないように、図書館、寮、体育施設、文化施設、医療施設、等が充実していて、学生が忙しく勉強に明け暮れる学期中や平日は生活がキャンパス内で完結している。アルバイトなども、大学に関係のある食堂の皿洗いや図書館の本の貸し出し・返却業務、キャンパス清掃等に限られている。大学院生はTAの仕事が可能である。キャンパスの立地と環境が、学生が勉強に専念できる基本設計思想になっている。
○4 このようにキャンパスで完結できる学生生活を送っている米国の大学生は、平日は勉強に集中し、週末は徹底的にリラックスするというメリハリの利いた学生生活をするのが普通である。平日は大学の外の街に出ることも少ない。また、夏休みは3か月あるが、多くの学生にとってこの期間は休みではなく、働いて(summer job)次の学期の学資をためる期間である。学期の期間中や週のうちの平日には勉強に集中するために図書館の充実が不可欠であり、開館時間は午前8時から夜12時まで、また24時間利用できる「24 Hour Room」が置かれている。学生は金曜日の夕方から土曜日の夜までは勉強しない。パーティや運動が盛んに行われる。この、週末のリラックスのためには寮、運動施設、文化施設などの完備が不可欠である。これに対して典型的な日本の大学生の学生生活は、大都会でアパートに暮し、通学に時間がかかり、図書館の利用頻度も低く、運動に汗を流せる施設も少ない。アルバイト優先の生活態度も少なくない。これを要するに、大学教育にかける資源の量が日米の大学では全く違うといってよい。
○5 この差の原因の一つに、授業料の差があることは間違いない。米国の大学の授業料は日本の大学の授業料に比べて非常に高い。私立大学では年間授業料は平均で35,000ドルくらいであろう。これに学生生活費が12,000ドルくらい必要である。州立大学の場合、リーマンショック以来、州立大学に充てられる州政府予算は大幅に削減されている(私立大学でも運用基金が大幅に損害を被った大学は多い)。このような状況下で、州立大学の授業料も、近年大幅に引き上げられている。州立大学でも州内出身の学生(父母が州税納入者)の授業料(In-state Tuition-年間平均9,000~10,000ドル)と州外出身学生の授業料(Out of state Tuition-年間平均20,000ドル)は異なる。このように高い授業料と州政府の予算によって米国の大学の教育の質は保たれているのである。また、米国における寄付文化の伝統も大学経営に資するところ大である。米国の平均的な家庭の収入ではこれらの高い学費を負担することはできない。当然、学費は学生自身が連邦政府貸与ローンなどを利用して賄うことになる。貸与されたローンは学生が卒業後に数十年をかけて返却するのである。
○6 米国の大学生が連邦政府貸与ローンを利用できるためには、通学する大学が大学認証機関(the accreditation agencies)によって認証された正規の大学であることが条件となっている。米国の大学がなぜ認証機関による認証を受けることを重視しているかの理由は、認証を受けなければ(accredited)学生が来ないということがあるからである。高校生も大学進学志望校を選択するに際しては、志望校が大学認証機関によって認証されているか否かを必ず確認している。
○7 米国では大学入試に際しては多方面からの評価によって選抜を行う。高校3年間の成績、SATの点数、クラブ活動、社会奉仕、高校担任の推薦状、などなど。従って、高校の通常の勉強が志望大学への合格にとって最重要である。高校の授業は対話型が多く、暗記型は少ない。予習のための宿題が多い。従って、大学入学時に、すでに対話型の授業に慣れている。日本の教育では小中高大学を通じて学生(生徒)が対話型の授業を受ける機会が極めて少ない。
○8 日本の大学教育は一度の大学入試を経て合格すると進学した大学で4年間を過ごし卒業する。すなわち学生の大学間移動がない。各大学が入試選抜によって受け入れた学生を囲い込んでいる。米国の大学では多様な大学間で学生の移動が可能であり、移動の際に目安となるのは大学間の授業科目間調整(articulation)と学生のGPAである。学生達は、例えば、とりあえずコミュニティカレッジに入学し、そこで勉強に励んで高いGPAを取得し、その高いGPAを持って、コミュニティカレッジよりもランクの高い州立大学に編入してゆく。いわば大学間横断が可能である。しかし、日本の大学にはこのような「大学間渡り鳥制度」がないために、学生は大学に囲い込まれたままで、勉学途中で移動するようなことはできない。日本のこのような硬直的大学制度はグローバルな規模で起こっている大学生の流動化(「学生渡り鳥制度」)に対応できない。
○9 日本の大学ではシラバスの作成と公表が義務化されているが、多くの場合、授業予定(工程)表としてのシラバスが学生にとって使えるような内容になっていない。すなわち、学生はシラバスによって授業の内容・進捗を確認し、毎回の授業に合わせて予習・復習をするのであるが、日本の大学のシラバスは、学生が予習・復習できるような工程表の要件を欠いている。(例:シラバスの中で「参考文献は授業中に指示します」などという参考文献の取り扱いを頻繁に見かけるが、これでは学生が予習をして授業に臨むことはできない。学生は受け身の受講にならざるを得ず、双方向の授業にはならない。)不完全なシラバスは学生の勉学を動機づけない。
○10 日本の大学で行われている大規模授業では学生が授業に出席する頻度は高くない。また、成績評価が学期末の筆記テストのみで行われることが多い。米国でも大規模授業はあるが、その場合には大教室での授業は専任の教員(多くはベテラン教員)が担当し、大人数の学生を少数グループに分けてディスカッション・セクッション制をとっている。ディスカッション・セクッションでは受講生たちを少人数グループに分け、大教室で専任教員が行った講義の内容を使って受講生たちがデイスカッションを繰り広げる。これは大教室での授業のこれを大学院博士後期課程で博士候補試験に合格した学生(the doctoral candidate=DC)がTA(the teaching associate=学内補助講師)となって指導するのである。TAの博士課程学生は授業料免除とともに奨学金を与えられることが多い。DCの多くは博士号取得後に大学で教職に就くことが多いので、博士課程在学中にTAを経験することは大学へ就職する際に重要な準備を行うことになる。
○11 ここで、TAにも2種類あることに言及しておく必要がある。これは博士課程の学生が勉学の進捗状況によって2段階に分けられることと連動している(しかし、ここでいう博士課程とは日本で言われている博士課程前期(修士課程相当)と博士課程後期(博士課程相当)の区分とは異なることに注意。後述するように、米国の大学院博士課程-日本の博士課程後期にあたる時期-は2段階に分かれている。すなわち、○1博士候補資格試験(the doctoral qualifying examination)合格前の博士課程の学生は博士課程学生(the doctoral student=DS)と呼ばれ、○2博士候補試験合格後の学生は博士候補学生(the doctoral candidate=DC)と呼ばれる。博士課程に入学して日が浅く、コースワーク(受講課程)受講中で博士候補資格試験(the doctoral qualifying examination)に合格していないDS学生は教員の授業準備を手伝う仕事などを行うが、ディスカッション・セクションを担当する学内補助講師にはなれない。他方、博士課程候補試験に合格したDC(さらに、博士論文プロポーザルに合格し、博士論文執筆中のDCであれば尚更)はディスカッション・セクションを担当し、学生の成績をつける権限と責任を付与される。
日本の大学の大学院では、このように博士候補資格試験(the doctoral qualifying examination)制度が厳格に確立されていないために、TA制度やTAの身分、仕事に関する議論もあいまいであり、TAといえば教員の授業準備を行う助手であるといったくらいの理解しかなされていないのは問題である。TA制度の未確立は将来の大学教員になるであろう大学院学生に対して、とくにDC段階の学生に対して、彼らが大学教員として効果的な授業を行うために必要な授業訓練の機会を与えられないことを意味している。このことが日本の大学教育の質の向上を妨げている。
○12 学生の学習成果(Learning Outcomes)の確認は、多方面からなされるべきである。たとえば、米国の大学では、成績の付け方は、中間試験(たとえば、全成績の10%)、最終試験(40%)、授業出席と議論への参加(20%)、グループプロジェクトとその報告(30%)、などを基礎にする。ビジネススクールの授業ではグループプロジェクト評価の場合、学生同士がグループプロジェクトへの各メンバーの貢献度を相互評価しあう。この相互評価の結果が学生の学期末成績に影響を持つことも多い。最終成績はアルファベットのA,B,C,D,Fなどを付されるが、Aは最終成績に換算される全得点の100~90%,Bは89~80%,Cは 79~70%, Dは69~60%, 60%以下はF(Fail)となる。成績は相対評価で、その分布は多くの場合正規分布的になる。したがって、Aは上位10%、Bは次の35%、Cは35%、Dは15%、Fは5%、と言った分布になる。米国の大学生の中には点取り虫的な学生も多いが、学生が勉強をしなければならない理由はこのように明確な成績付与方針(the grading policy)にもある。GPA換算ではA=4点、B=3点、C=2点、D=1点、F=0点、となり、Cummulative GPA(全学年を通じてのGPA)が1.00を下回る学期が3~4学期あると退学になる。このようにしてグレードインフレーションを防ぎ、学生の成績管理をしている。
○13 米国では大学生の学資を親が仕送りするという習慣はあまりない。米国の大学生の多くは奨学金や連邦政府貸与ローンで学費を賄っており、将来返還の義務がある。従って、大学に来ても勉強しないということは「借金をしながら返済のことを考えずに遊んでいる」ということであり、彼らにとって考えられない事態である。
○14 しかし、近年の日本経済の停滞を反映して親からの仕送りが減っていることも事実であり、親元を離れて大学生活を送る日本の学生は生活費の不足分をアルバイトに頼らざるを得ない。しかし、ここでも、明確な大学生活の目的や勉強の動機を持たない場合には、アルバイトが学生生活の中心になり、勉強に費やす時間がなくなることもまれではない。
○15 米国の大学生の就職では、専攻分野によって初任給が違う事が多い。また、大学時代の成績(GPA)や指導教授の推薦状が就職に際して重要視されている(指導教授は必ずしも推薦状に良いことだけを書くわけではない。公正で率直な学生評価が重要視されている。教員が了承すれば、学生は就職希望先に対し教員がどのような推薦状を書いたか、その開示を求めることが出来る)。従って、よく勉強し、よい成績を収めて、よい収入の職に就くということが直截につながっている。
○16 日本の学生が勉強しないという事実を学生のみの責任に帰すことは彼らにとってフェアではない。学生が勉強をする現場は教室での授業が基本であり、授業に対して責任を持つべきなのは教員である。したがって、学生が意欲を持って勉強するような授業の環境を整えることは、まず第一に、教員の責任である。授業は(特に対話的授業は)教員と学生のコラボレーションによって構築されるものであって、学生の積極的参加を促すような授業を創りだすことは教員のクラスマネジメント能力による。ところが、日本の大学の教員の多くは授業の進め方やクラスマネジメントに関する訓練を受けていない。米国の大学の新任教員は、teaching clinic等で授業の進め方やクラスマネジメントに関する訓練を受ける。大学は教員にこのような訓練を受ける機会を提供しなければならない。大学行政側が行う教員評価は教員がこの様な訓練を受けていることを前提として行われなければ公正さを欠くものとなる。日本の大学で現今行われているFDの多くは、教員のセミナーや講習会等に限られており、FDの本来の在り方とは異なるものである。
○17 授業とは知識の伝達であると同時に、教員と学生間の、あるいは学生同士の対話や感性的交流や人格的な陶冶の場になることを期待されている。教育は学生の個性豊かな全人力を陶冶する全人教育(『学士課程教育の構築に向けて』の趣旨)であるべきである。しかし、このことは教員も同時に全人格的な能力を持っていなければならないことを意味する。これは幼小中高大学の全ての段階で教育に携わる者が常に求められる必須要件である。大学教員はこの要件を満たすべく努力することを求められている。
○18 以上、なぜ日本の学生が米国の学生に比べて勉強しないか、について思いつくままの諸要因と考えられるものを挙げてみたが、日本の教育制度や学生の生活ぶりについてその問題点を論じたために、基本的トーンが批判的なものになってしまったかもしれない。しかし私の考えの基本は、日本の教育制度を良くして次世代を担う学生に充実した学生生活を送ってほしいという願いに過ぎない。そのような教育制度を作ることは社会や大学や教員の責任であるし、誇りでもある。また、学生が充実した勉学に明け暮れ、学生生活を送ることは彼らの権利であり喜びでもある。
素晴らしいプレゼンだと思います。
本当にその通りです。
鈴木 典比古 公立大学法人国際教養大学理事長・学長
大学分科会(第108回)・大学教育部会(第20回)合同会議 配付資料より
日本人の大学生が欧米の大学生に比べて勉強していないという状況は東京大学・大学経営政策研究センター「全国大学生調査」(2007年、サンプル数44,905人)による大学1年生の週平均勉強時間数の比較でも示されているが、米国で10年、日本で26年程教鞭をとった私の個人的な経験からしても事実であると思う(ただし、私が学長を務めたICUの学生の名誉のために付け加えるならば、彼らの多くは米国の学生並みに勉強をしていると言える)。これには日米の大学生の生活・学習環境の違いに帰される面もある。日本の大学生が大学で勉強しない理由として、以下のような事情があるのではなかろうか。(ただし、以下のコメントでは、平均的な日米の学生を想定している)
○1 日本の大学生は高校での受験勉強(暗記型)で疲弊した後に大学に入ってくる。しかも、2~3月に大学に合格すると、その疲弊を回復する間もなく、4月には入学して大学生活が始まる。大学生活の最初から、自ら学習する習慣が身についていない。また、高校の時期に時間的な余裕や考える機会が余りないことから、大学に来る目的を明確に自覚していない学生が多い。大学生活を含めた自分の生き方を若い時期のどこかの時点で真剣に考えなければならない。しかし、その事を経験しないまま受験→大学生活→就職→職業生活→退職という人生のレールを歩いている。これは多くの日本人の一様な人生模様であると言ってよいであろう。
○2 米国のリベラルアーツ系大学では入学の時点では学生の専攻は前もって決まっていない。1~2年次に一般教育を履修しながら自分の専攻分野(Major)を決めてゆくのである。この段階は自分の適性、進路、職業、人生と専攻分野をいかに関連付けるか模索する時期で、大学生活にとって重要な体験の時期である。ところが、日本では大学の入学試験が専攻分野別の入試なので、高校の受験勉強(暗記型)のみで大学への進路決定が短絡的になされてしまうことが多い。高校での進路指導も偏差値による進路決定や志望校分別が強いて言うならば機械的に行われている。全人教育(後述)を行うとされる学士課程教育に入学してくる新入生が高校の段階で既にこのような機械的進路指導と分別を受けてくることの矛盾を考えなければならない。真の意味での高大連携が出来ていない。しかし、日本の各大学が独自の偏った入試問題によって入試選抜を行っている点にも大いに原因がある。この事が高校教育のあるべき姿を歪めていることは否定できない。
○3 米国の多くの大学は都会を離れた閑静な田舎に立地し、大学町を形成している場合が多い。特にキャンパスを州政府から供与されているthe land grant universityやリベラルアーツ系の小規模大学はそうである。この様なキャンパス環境では学生が勉学や日常生活に支障を来さないように、図書館、寮、体育施設、文化施設、医療施設、等が充実していて、学生が忙しく勉強に明け暮れる学期中や平日は生活がキャンパス内で完結している。アルバイトなども、大学に関係のある食堂の皿洗いや図書館の本の貸し出し・返却業務、キャンパス清掃等に限られている。大学院生はTAの仕事が可能である。キャンパスの立地と環境が、学生が勉強に専念できる基本設計思想になっている。
○4 このようにキャンパスで完結できる学生生活を送っている米国の大学生は、平日は勉強に集中し、週末は徹底的にリラックスするというメリハリの利いた学生生活をするのが普通である。平日は大学の外の街に出ることも少ない。また、夏休みは3か月あるが、多くの学生にとってこの期間は休みではなく、働いて(summer job)次の学期の学資をためる期間である。学期の期間中や週のうちの平日には勉強に集中するために図書館の充実が不可欠であり、開館時間は午前8時から夜12時まで、また24時間利用できる「24 Hour Room」が置かれている。学生は金曜日の夕方から土曜日の夜までは勉強しない。パーティや運動が盛んに行われる。この、週末のリラックスのためには寮、運動施設、文化施設などの完備が不可欠である。これに対して典型的な日本の大学生の学生生活は、大都会でアパートに暮し、通学に時間がかかり、図書館の利用頻度も低く、運動に汗を流せる施設も少ない。アルバイト優先の生活態度も少なくない。これを要するに、大学教育にかける資源の量が日米の大学では全く違うといってよい。
○5 この差の原因の一つに、授業料の差があることは間違いない。米国の大学の授業料は日本の大学の授業料に比べて非常に高い。私立大学では年間授業料は平均で35,000ドルくらいであろう。これに学生生活費が12,000ドルくらい必要である。州立大学の場合、リーマンショック以来、州立大学に充てられる州政府予算は大幅に削減されている(私立大学でも運用基金が大幅に損害を被った大学は多い)。このような状況下で、州立大学の授業料も、近年大幅に引き上げられている。州立大学でも州内出身の学生(父母が州税納入者)の授業料(In-state Tuition-年間平均9,000~10,000ドル)と州外出身学生の授業料(Out of state Tuition-年間平均20,000ドル)は異なる。このように高い授業料と州政府の予算によって米国の大学の教育の質は保たれているのである。また、米国における寄付文化の伝統も大学経営に資するところ大である。米国の平均的な家庭の収入ではこれらの高い学費を負担することはできない。当然、学費は学生自身が連邦政府貸与ローンなどを利用して賄うことになる。貸与されたローンは学生が卒業後に数十年をかけて返却するのである。
○6 米国の大学生が連邦政府貸与ローンを利用できるためには、通学する大学が大学認証機関(the accreditation agencies)によって認証された正規の大学であることが条件となっている。米国の大学がなぜ認証機関による認証を受けることを重視しているかの理由は、認証を受けなければ(accredited)学生が来ないということがあるからである。高校生も大学進学志望校を選択するに際しては、志望校が大学認証機関によって認証されているか否かを必ず確認している。
○7 米国では大学入試に際しては多方面からの評価によって選抜を行う。高校3年間の成績、SATの点数、クラブ活動、社会奉仕、高校担任の推薦状、などなど。従って、高校の通常の勉強が志望大学への合格にとって最重要である。高校の授業は対話型が多く、暗記型は少ない。予習のための宿題が多い。従って、大学入学時に、すでに対話型の授業に慣れている。日本の教育では小中高大学を通じて学生(生徒)が対話型の授業を受ける機会が極めて少ない。
○8 日本の大学教育は一度の大学入試を経て合格すると進学した大学で4年間を過ごし卒業する。すなわち学生の大学間移動がない。各大学が入試選抜によって受け入れた学生を囲い込んでいる。米国の大学では多様な大学間で学生の移動が可能であり、移動の際に目安となるのは大学間の授業科目間調整(articulation)と学生のGPAである。学生達は、例えば、とりあえずコミュニティカレッジに入学し、そこで勉強に励んで高いGPAを取得し、その高いGPAを持って、コミュニティカレッジよりもランクの高い州立大学に編入してゆく。いわば大学間横断が可能である。しかし、日本の大学にはこのような「大学間渡り鳥制度」がないために、学生は大学に囲い込まれたままで、勉学途中で移動するようなことはできない。日本のこのような硬直的大学制度はグローバルな規模で起こっている大学生の流動化(「学生渡り鳥制度」)に対応できない。
○9 日本の大学ではシラバスの作成と公表が義務化されているが、多くの場合、授業予定(工程)表としてのシラバスが学生にとって使えるような内容になっていない。すなわち、学生はシラバスによって授業の内容・進捗を確認し、毎回の授業に合わせて予習・復習をするのであるが、日本の大学のシラバスは、学生が予習・復習できるような工程表の要件を欠いている。(例:シラバスの中で「参考文献は授業中に指示します」などという参考文献の取り扱いを頻繁に見かけるが、これでは学生が予習をして授業に臨むことはできない。学生は受け身の受講にならざるを得ず、双方向の授業にはならない。)不完全なシラバスは学生の勉学を動機づけない。
○10 日本の大学で行われている大規模授業では学生が授業に出席する頻度は高くない。また、成績評価が学期末の筆記テストのみで行われることが多い。米国でも大規模授業はあるが、その場合には大教室での授業は専任の教員(多くはベテラン教員)が担当し、大人数の学生を少数グループに分けてディスカッション・セクッション制をとっている。ディスカッション・セクッションでは受講生たちを少人数グループに分け、大教室で専任教員が行った講義の内容を使って受講生たちがデイスカッションを繰り広げる。これは大教室での授業のこれを大学院博士後期課程で博士候補試験に合格した学生(the doctoral candidate=DC)がTA(the teaching associate=学内補助講師)となって指導するのである。TAの博士課程学生は授業料免除とともに奨学金を与えられることが多い。DCの多くは博士号取得後に大学で教職に就くことが多いので、博士課程在学中にTAを経験することは大学へ就職する際に重要な準備を行うことになる。
○11 ここで、TAにも2種類あることに言及しておく必要がある。これは博士課程の学生が勉学の進捗状況によって2段階に分けられることと連動している(しかし、ここでいう博士課程とは日本で言われている博士課程前期(修士課程相当)と博士課程後期(博士課程相当)の区分とは異なることに注意。後述するように、米国の大学院博士課程-日本の博士課程後期にあたる時期-は2段階に分かれている。すなわち、○1博士候補資格試験(the doctoral qualifying examination)合格前の博士課程の学生は博士課程学生(the doctoral student=DS)と呼ばれ、○2博士候補試験合格後の学生は博士候補学生(the doctoral candidate=DC)と呼ばれる。博士課程に入学して日が浅く、コースワーク(受講課程)受講中で博士候補資格試験(the doctoral qualifying examination)に合格していないDS学生は教員の授業準備を手伝う仕事などを行うが、ディスカッション・セクションを担当する学内補助講師にはなれない。他方、博士課程候補試験に合格したDC(さらに、博士論文プロポーザルに合格し、博士論文執筆中のDCであれば尚更)はディスカッション・セクションを担当し、学生の成績をつける権限と責任を付与される。
日本の大学の大学院では、このように博士候補資格試験(the doctoral qualifying examination)制度が厳格に確立されていないために、TA制度やTAの身分、仕事に関する議論もあいまいであり、TAといえば教員の授業準備を行う助手であるといったくらいの理解しかなされていないのは問題である。TA制度の未確立は将来の大学教員になるであろう大学院学生に対して、とくにDC段階の学生に対して、彼らが大学教員として効果的な授業を行うために必要な授業訓練の機会を与えられないことを意味している。このことが日本の大学教育の質の向上を妨げている。
○12 学生の学習成果(Learning Outcomes)の確認は、多方面からなされるべきである。たとえば、米国の大学では、成績の付け方は、中間試験(たとえば、全成績の10%)、最終試験(40%)、授業出席と議論への参加(20%)、グループプロジェクトとその報告(30%)、などを基礎にする。ビジネススクールの授業ではグループプロジェクト評価の場合、学生同士がグループプロジェクトへの各メンバーの貢献度を相互評価しあう。この相互評価の結果が学生の学期末成績に影響を持つことも多い。最終成績はアルファベットのA,B,C,D,Fなどを付されるが、Aは最終成績に換算される全得点の100~90%,Bは89~80%,Cは 79~70%, Dは69~60%, 60%以下はF(Fail)となる。成績は相対評価で、その分布は多くの場合正規分布的になる。したがって、Aは上位10%、Bは次の35%、Cは35%、Dは15%、Fは5%、と言った分布になる。米国の大学生の中には点取り虫的な学生も多いが、学生が勉強をしなければならない理由はこのように明確な成績付与方針(the grading policy)にもある。GPA換算ではA=4点、B=3点、C=2点、D=1点、F=0点、となり、Cummulative GPA(全学年を通じてのGPA)が1.00を下回る学期が3~4学期あると退学になる。このようにしてグレードインフレーションを防ぎ、学生の成績管理をしている。
○13 米国では大学生の学資を親が仕送りするという習慣はあまりない。米国の大学生の多くは奨学金や連邦政府貸与ローンで学費を賄っており、将来返還の義務がある。従って、大学に来ても勉強しないということは「借金をしながら返済のことを考えずに遊んでいる」ということであり、彼らにとって考えられない事態である。
○14 しかし、近年の日本経済の停滞を反映して親からの仕送りが減っていることも事実であり、親元を離れて大学生活を送る日本の学生は生活費の不足分をアルバイトに頼らざるを得ない。しかし、ここでも、明確な大学生活の目的や勉強の動機を持たない場合には、アルバイトが学生生活の中心になり、勉強に費やす時間がなくなることもまれではない。
○15 米国の大学生の就職では、専攻分野によって初任給が違う事が多い。また、大学時代の成績(GPA)や指導教授の推薦状が就職に際して重要視されている(指導教授は必ずしも推薦状に良いことだけを書くわけではない。公正で率直な学生評価が重要視されている。教員が了承すれば、学生は就職希望先に対し教員がどのような推薦状を書いたか、その開示を求めることが出来る)。従って、よく勉強し、よい成績を収めて、よい収入の職に就くということが直截につながっている。
○16 日本の学生が勉強しないという事実を学生のみの責任に帰すことは彼らにとってフェアではない。学生が勉強をする現場は教室での授業が基本であり、授業に対して責任を持つべきなのは教員である。したがって、学生が意欲を持って勉強するような授業の環境を整えることは、まず第一に、教員の責任である。授業は(特に対話的授業は)教員と学生のコラボレーションによって構築されるものであって、学生の積極的参加を促すような授業を創りだすことは教員のクラスマネジメント能力による。ところが、日本の大学の教員の多くは授業の進め方やクラスマネジメントに関する訓練を受けていない。米国の大学の新任教員は、teaching clinic等で授業の進め方やクラスマネジメントに関する訓練を受ける。大学は教員にこのような訓練を受ける機会を提供しなければならない。大学行政側が行う教員評価は教員がこの様な訓練を受けていることを前提として行われなければ公正さを欠くものとなる。日本の大学で現今行われているFDの多くは、教員のセミナーや講習会等に限られており、FDの本来の在り方とは異なるものである。
○17 授業とは知識の伝達であると同時に、教員と学生間の、あるいは学生同士の対話や感性的交流や人格的な陶冶の場になることを期待されている。教育は学生の個性豊かな全人力を陶冶する全人教育(『学士課程教育の構築に向けて』の趣旨)であるべきである。しかし、このことは教員も同時に全人格的な能力を持っていなければならないことを意味する。これは幼小中高大学の全ての段階で教育に携わる者が常に求められる必須要件である。大学教員はこの要件を満たすべく努力することを求められている。
○18 以上、なぜ日本の学生が米国の学生に比べて勉強しないか、について思いつくままの諸要因と考えられるものを挙げてみたが、日本の教育制度や学生の生活ぶりについてその問題点を論じたために、基本的トーンが批判的なものになってしまったかもしれない。しかし私の考えの基本は、日本の教育制度を良くして次世代を担う学生に充実した学生生活を送ってほしいという願いに過ぎない。そのような教育制度を作ることは社会や大学や教員の責任であるし、誇りでもある。また、学生が充実した勉学に明け暮れ、学生生活を送ることは彼らの権利であり喜びでもある。
素晴らしいプレゼンだと思います。
本当にその通りです。
- 関連記事
-
- 世界的に見ても女子は男子より成績が良い これが続くと...【研究結果】 (2015/05/03)
- 福岡伸一「文系と理系の溝が成果の共有を阻む」 (2015/05/03)
- 「レポート 売ります! 買います!」 ハッピーキャンパス (2015/04/20)
- 「なぜ日本の大学生は欧米の大学生に比べて勉強しないのか」 (2015/03/08)
- 上久保誠人「英国留学1年目の悲惨な経験を話そう」 (2015/02/26)
- 山崎 元「センセイたちにお任せの大学教育 授業の「品質管理」が最大の問題」 (2015/02/26)
- 高校生の価値意識は志望分野でどう異なるか ①全体傾向 (2015/02/20)
- 学力レベルと高大接続―学力クライシス下の高大接続 (2015/02/18)
- 「学校行かずに練習ばかりしていれば、強くなって当然だろ」という意見に対して (2015/02/15)
- 中教審 「学校における安全教育の充実について」 (2015/02/12)
- 公立学校における校内人事の決定及び職員会議に係る学校内の規程等の点検・調査について (2015/01/31)
- 英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第1回) 議事録 (2015/01/28)
- 運動部活動は日本独特の文化である――諸外国との比較から (2015/01/28)
- 新たな高等教育機関を「4流の大学もどき」にしないために (2015/01/27)
- 内発的動機と外発的動機 (2015/01/26)